レトロな昭和の味(前編)
弊社の近くにある中華レストランチェーン「日高屋」は、ランチ時に行列ができる人気店です。というよりも、ここ千駄ヶ谷近辺はレストランが少なく、どこもランチタイムは人であふれている状況です。となればテイクアウトできる店も人気で、サンドイッチ店もいくつかあります。おなじみサブ
ウェイとちょっと高めのモスクラシック、個人店では「HATONOMORI」というサバサンドを売りにしているレストランは若い女性客で大盛況ですし、メニューはこだわりのパンとコーヒーのみという小さな店にも行列ができます。
千駄ヶ谷から神宮前二丁目界隈はアパレル関連の会社が多く、さしずめファッション界の“頭脳労働者”が集まる特殊エリア。行き交う男女も個性あふれるファッショナブルないでたちで、2020年に開催される東京オリ・パラに向けて建設が進む新国立競技場のモダンで斬新なデザインにもマッチする? 洒落た街並みでもあります。
私は50年程前に「日高屋」の前身、埼玉の来々軒さんが新宿駅地下に出店(少々記憶が曖昧ではありますが)していた“喫茶ひだか”で友人とアルバイトしていた事を鮮明に覚えています。2人で面接を受けた結果、憧れの接客サービス担当は背が高くてイケメンの友人が、私はキッチンでの調理補助に決定。この店は若い女性客が多いこともあって若い男子としては是が非でも接客係をやりたいですよね。しかし私はというと、当時いちばん人気だったドリンクメニューのチェリー入りメロンソーダとオムライスとナポリタンの調理係。原液を炭酸水で薄めるだけのメロンソーダはともかく、オムライスは技術を要しました。初日に何回も失敗したので、その日の晩に自宅で一人大特訓を重ねました。
薄くフライパンにひいた溶き卵の上にタマネギとマッシュルールの薄切り、鶏肉の小間を炒めてライスを混ぜ、ケチャップで味付け。それを薄焼き玉子の真ん中に適量のせ、フライパンの取っ手を逆手に持ち替えて皿に回しのせて完成です。味付けはケチャップだけですから、どこでも誰がつくっても変わらないシンプルなおいしさ。昭和のレトロ感あふれるノスタルジックな味は、今でもナポリタンと並んで愛され続けています。もちろん私にとっても、半世紀近くを経た今なお特別な料理の一つです。
そんな懐かしい記憶を呼び起こしてくれる「日高屋」の千駄ヶ谷店にてランチをしました。さて、久々に感じた出来事とは? 次号に続きます。
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