家内が同じ動物共生型マンションに住む女友達3人とハワイに行ったので、旦那衆は愛犬と共に一週間の留守番となった。我が家の愛犬"リュウ"はどこに行くのも家内にまとわりついているのだが、留守を察してかここ連日の夏日にうんざりしながら風通しの良いベランダに寝そべっている。20日の日曜礼拝の帰り、教会の近くにある"都会の農家"で農薬や化学肥料を使用しない有機野菜を購入し、三鷹の紀伊国屋に寄りピタパンと高座豚のバラ肉ブロックと赤ワイン一本も仕入れ"リュウ"の待つ我が家へ戻った。
こんな日は一人でビールを飲みながら、のんびり創作料理を作るのも面白い。コンソメスープで豚バラ肉を2時間、さらに赤ワインをたっぷり一本入れて1時間煮込み、トロトロのやわらかい赤ワイン煮が出来たところで、ピタパンを半分に切り"都会の農家"で仕入れた有機野菜のカリフラワー、胡瓜、トマト、レタスの小口切りを日清オイリオの体に良い「リセッタオイル」を使用したシーザードレッシングで和える、トロトロの赤ワイン煮をほぐし、ピタパンの中へ押し込む。製作時間3時間、創作サンドウィッチの完成だ。
台風の影響か、心地良い風が少し強くなってきたベランダに出て"リュウ"の前に座りガブリとやる。どこか懐かしい味が口中に広がる。昔まだ小学生低学年の悪ガキだった頃の私のおやつは竹の皮で三角に包んだ中のおふくろが漬けた5年物の梅干一つ。チュパチュパと吸うと脇から梅干の実が出てくる。舐め続けると竹の皮が真赤に変色してくる。そんな記憶が甦る味は、今では贅沢品となった自然の野菜の美味しさが口の中で食材本来の持ち味を活かし主張しているからだろう。二口目をガブリとやる私を"リュウ"が上目使いに体毛を風になびかせ見つめている。
一口目は美味しくて、二口目も飽きない味。これが大事なのだと私は思う。
行って来ました”天売島“(てうりしま)。フェリーの出る羽幌までは、札幌から高速バスで3時間30分、フェリーで90分。長い道のりだが、そこはまるで別世界。人口500人、周囲12平方kmのこの島の真裏に海鳥が100万羽生息している。埠頭で出迎えてくれた井上さん(前日糧製パン社長)と共に、早速レンタカーで島内ウォッチングに出かけた6月11日、真夏のような雲一つない青空と海風が心地よい絶好の日和で、2万羽生息しているカモメ達がミャーミャーと私達にまとわりついてくる。赤岩展望台周りでは道路の脇や草むらに直径10㎝位の無数の穴があいている。「これがウトウ(善知鳥)の巣穴ですよ、現在30万のつがいが確認されているから、それ以上あります。ここに今夜60万羽のウトウが帰ってくるんです」と嬉しそうに説明する井上さん。旅館に戻り、少し早めの夕食は、アワビの踊り焼きと刺身、採れたてのウニ超山盛り、ボタンエビ、甘エビ、松葉蟹と海鮮が山盛り。大のアワビ、ウニ好きの家内が思わず「もうダメ」と残すほど新鮮な魚介を堪能させて頂いた。
夕方6時、迎えのバスに乗り、いよいよ”ウトウ“の帰巣シーンのウォッチング。午後7時、利尻島の「利尻富士」の左に真赤な太陽が今まさに沈もうとしている時、双眼鏡で覗くと、丸い太陽に無数の黒点が上下左右に乱舞している。5分、10分、その点がどんどん大きくなり、太陽は沈み、もう眼の前に迫ってきた”ウトウ“の群れ。それを待ち構えるカモメの軍勢。カモメは巣穴の前で身じろぎもせずに待つ。上空で乱舞して空中戦の準備をするカモメとカラス…。とその瞬間私のすぐ近くの穴をめがけて一羽のウトウが勢いよく帰着。目にも止まらぬ早業でカモメの襲撃を避ける業は生きる知恵、巣穴でただひたすら待っているヒナは親鳥が口一杯に咥えた硬口イワシを喜んで食べていることだろう。30万個ある巣穴の一つが自分の家で、毎年間違えずにウトウは自分の家に帰ってくるという。しかし、たまに間違えて、隣の穴に入り込んだウトウは「やっちゃたー」と言わんばかりにトコトコ表に出てくる。そこを5~6羽のカモメに容赦なく口に咥えた小魚をひったくられる。
午後8時、月明かりの星空にはまだたくさんのウトウが小魚を咥え、巣穴に帰るタイミングをはかっている。時折”バサッ、バサッ“という羽音が私の頭をかすめる。
孫を連れてハワイも良いけれど、来年は”天売“に連れて来ることにしよう。大自然の不思議、そして素晴らしさ、”生きる“ということの大切さを実際に見せなくては。
「空の鳥を見なさい。蓄えもしなければ、つむぎもしない」(新約聖書マタイの福音書6章26節)。
未知の大自然に一つ触れると一つ得した気分になる。
ぬけるような青空、心地良いそよ風、梅雨の前のつかの間の好天気はまるで初夏のごとく気分の良いものだ。木々の緑も目に鮮やかで清々しい。しかし季節はうつろいで“梅雨”は確実にやって来る。
“梅雨”は梅の実が熟す頃とかさなるので、こう呼ばれているそうだ。暦の上では立春から135日目の6月11日頃が入梅となり、一ヶ月程続く。
ジトジトと降り続ける雨は時には憂鬱になるが、視点を変えてそれにひたると面白い。雨降る街を走る車のテールランプはまるで万華鏡のようだ。浅黄色、藍色、瑠璃色に染まり、傘を手に雨に濡れる見知らぬ家の垣根に咲く「紫陽花」に足を止め、しばし見とれる。ここで一句「五月雨や、紫陽花ほどの美しさ」。
梅雨が明けて、燦々と照りつける太陽のもと上着を手に汗を拭きながら同じ場所で見かける今度は枯れかけた「紫陽花」に一抹の淋しさがただよう。その枯れた紫陽花の果てに存在するもの・・・。これが「ワビ」というものか。視点を変えて物事を考える必要性とその楽しさは何ごとにもあてはまる。そして思考の先に見えてくるものは・・・。ときには“梅雨”を楽しんでみませんか。
農水省の発表によると、2003年国民が一年間に食べた米の量は戦後初めて60kg(一俵)を切ったことが分かった。同省の分析によると、40年余りでほぼ半分まで落ち込んだのは、パン、麺などの需要が伸びた事や、牛丼がメニューから消えたことなどが原因に挙げられている。
30年前の成人の一日カロリー必要摂取量は、3600kcalであったが、現在は2400kcalといわれている。戦後の栄養重視から、飽食の時代、そしてダイエット世代へと時は移り変わる。
昨年の高額納税者のトップは「スリムドカン」で一躍有名になったあの斉藤一人社長というのも時代を反映しているではないか。米離れは一体どこまで進行するのだろうか。我々パン業界も米を使用したパン作りに業界をあげて貢献しているが、消費量としてはわずかなものだ。安心、安全、健康を消費者と一体となって顧客満足の名の基に業界が叫ぶと、炭水化物摂取量が減り、ローカーボダイエットなどという耳慣れない言葉が一人歩きしてくる。お米もパンも体を元気にする素晴らしいエネルギー源だという事を踏まえて、新しい発想を探し求める努力が我々業界のこれからの課題であろう。同じような商品を各社が次々と世に送り出し、価格競争しているようでは業界の発展は望めない。古く明治の時代には、食、体、知、才、徳と五つの育が広く知られていたといわれる。団塊の世代の私に言えるのは、今後の顧客たる今の子供たちにその五つの育の原点に帰り「食育」という観点から商品作りに励む事が一番ではないかと思う。