誰もが同じ資質を持っているとは限らない。同じ様な顔をしていても、同じ体型でも、性格も運動神経も、趣味も違う。
人材を育てることはどの企業でも最も重要な課題の一つである。なによりも他の人と異なる点や平均値より少しでも飛び抜けている能力を知り引き出すこと、これが難しい。一方、ほっておいても信じられないスピードで仕事を覚え、ビックリするほどのアイデアを駆使して、今までは予想も考えもつかなかった事を平然とやってのけてしまう人もいる。このような人は“天才”であろう。
ところがこの“天才”という”生まれもった資質“をもった人が巷にゴロゴロころがっている。しかし成長とともにその才能も埋もれてしまい、脳細胞の奥深くで眠っているらしい。
まず企業はこの“資質”を引き出すことに取り組む必要があると私は思う。おざなりのマニュアルで接客や営業、企画のイロハを叩き込んでいるようでは、マニュアル通りのクローン人間しか生まれない。人間の視力の上限は2.5とされているが、実際には20.0まで測定可能なのはご存知あるまい。決められた上限で検査は終了する。就職戦線も活況を帯びてきた。来年採用の人材はいかにして”資質“を引き出せるか、それが企業繁栄のカギを握っている。人事担当者はうかうかできない。
山崎製パンの飯島延浩社長は、誰もが知る敬虔なクリスチャンビジネスパーソンだ。池の上キリスト教会(東京三鷹市)の責任役員を務める飯島社長は超多忙にもかかわらず月に二回、日曜礼拝の一時間前に自身で勉強した聖書の御言葉を「バイブル・スタディ」として自身の解釈を披露する。この会に毎回30名程の”生徒“が集まる。先週で290回をこなした。その時の一部を抜粋する。
「だから、明日のために心配は無用です。明日の事は明日が心配します。労苦はその日に十分あります(マタイの福音書6章34節)。今日一日の中でしっかりした仕事をしなければ決して良い仕事は何一つ前進しないのです。私がいただいた御言葉“一日は千年の如く、千年は一日の如く”とは今日一日を如何に充実して過ごすかが肝要であると示されました。その一日を千年だとすると、人間の寿命を百年として、十回生まれ変わる事のできる期間です。十回生まれ変わったとしても何一つ良い人生がなかったとすれば、その歩みは何か間違っているのです。しかし十回のうち一回でも良い人生があったとすれば、その努力を毎日積み重ねるならば必ず手応えのある良い働きができるのです。
このように考えてみると千年である一日のうちに十の仕事をするチャンスがある。そのうちの一つでも良い仕事を前進させることができれば感謝して寝ることができる。翌朝、目を覚ますと新しい今日であるが、新しい今日も十の仕事のチャンスがあり、そのうちの一つでも良い仕事ができれば感謝する。このような努力を30日続ければ一ヶ月、60日続ければ二ヶ月、90日続ければ三ヶ月となります。このような努力の積み重ねにも拘らず、業績が回復しないのなら、もって銘すべしです」。
このたとえは、2000年秋の虫クレーム以降の極端な業績不振を克服した話である。10月30日(土)、大久保の淀橋教会インマヌエル礼拝堂で創立百周年記念祭が行われ、午後二時より飯島社長は記念特別講演をする。“胸を打つ話”が期待される。
中国語で“コツ”は花の意味、“チェビ”は燕(ツバメ)を意味する。ツバメは暖かい所を探し渡るところから、放浪する子供たちを指して“コッチェビ”と称している。「食べ物を探して放浪する孤児」ということらしい。
この恵まれない“コッチェビ”達に毎日パンを食べさせてあげたいと、連日放映される北朝鮮関連のTVを観て胸が締めつけられる思いをしている。けれども私一人では何も出来ないジレンマ。世界ではこのような“コッチェビ”を含めてお腹を空かせて飢えに苦しむ子供たちが数え切れないほどひしめきあって生きている。教育も受けられず、充分な食料も無い。このような子供たちを援助するために私は特定非営利活動法人「ワールド・ビジョン」のチャイルドスポンサーシップ・プログラムに八年前から参加している。月々四千五百円で一人の子供の教育と保健、安全な水、食料供給。更に経済開発、リーダー育成など、子供たちが元気に生活できる基盤を整えるための活動支援だ。家内、娘と三人で、タイ、フィリピン、コロンビアに住む三人の子供たちから送られてくる成長記録や学業記録に目を細める。
出来るだけ早い時期に北朝鮮の“コッチェビ”たちにもこのプログラムによって生活や教育の援助が出来るようになることを願ってやまない。
ワールド・ビジョン・チャイルドスポンサーの問い合わせは、フリーダイアル 0120-456-009(月~金 午前9時~午後7時)
9月4日付の日経福岡版に小さな記事が載っていた。「製パン地場大手リョーユーパンの北村俊策社長は三日、福岡で記者会見し、子会社のベーカリー(ベルボワーズ)が8月末に博多大丸から退店要求を通告された事を明らかにした上で、『納得できない、法的措置も検討中』と反発した」。
話しは5年前に遡る。北村社長が語る「大丸さんにベルボワーズではたいへん世話になっている。何とか大丸さんを喜ばせてあげたいなあ」。この時期ベルボワーズは月商4千万円弱、一度見て下さいと誘われ一緒に行ってみた。平日の午後2時過ぎ店頭では超人気のガーリック・トーストの焼き立てを買い求める人で溢れていた。店内は4台のレジがフル稼働。オープンキッチンで作られる数々のサンドウィッチが次々とコーナーの棚を埋め、その都度客がトレーにのせていく。混雑する店内の客を避けるように高々と店員が掲げたトレーの中には、奥のキッチンから焼き立てのガーリック・トーストが香ばしい香りをまき散らし、店頭へ運ばれる。「ただ今ガーリック・トースト焼き上がりましたー」店員の声に更に行列が伸びる。
「年内にエリック・カイザーをパリから呼んで、デモンストレーションさせるつもりだよ、大丸は喜ぶぞ」。北村社長はこの光景を見ながら私に言った。その年の暮れ、日商230万円を超える活況に博多大丸の社長以下スタッフは北村社長と共に笑顔で売場を見つめていたのを私は記憶している。
百貨店のテナント入れ替えにはそれぞれ思惑があるだろうが、20年も続く博多大丸内の老舗ベーカリー、ベルボワーズの退店要求に絡む問題は、これにとどまらず全国の百貨店に警鐘を鳴らす事だろう。