「これはワインを超えていると感じたのは、繊細な料理との組み合わせの妙によるものと理解しますね。ワインの世界では私のつたない経験の範囲ですが、あそこまで細やかさは得られませんね。日本の食文化の奥深さでしょう」。オリエンタル酵母工業内藤利邦社長は江戸切子のグラスを片手に十四代〝特吟〟の四合瓶を見つめながら静かに語る。そして一言「華やかさがある」。その日供された酒は而今、村祐D、丈径、磯自慢、仁佐衛門、それぞれが相性の良い肴と共に出てくるが、〝古酒・達麿正宗〟には驚かされた。うなぎを茄子で挟んだ天ぷらをモンゴル塩で食すのだが、まさに究極の逸品!相性抜群である。
毎度この欄で取り上げている高円寺のうどん屋「さぬきや」でのひと時、至福の時が静かに流れる。しかしなんとこの店が王様のブランチというテレビ番組で先週紹介されてしまった。こともあろうに若ダンナはスタジオで「冷やしカレーうどん」の実演までしてしまってスタジオ中を絶句させた。さあたまらない、放映当日は開店前から長蛇の列で毎日用意されている百杯のうどんは全て「冷やしカレーうどん」で完売し、閉店したというからテレビは怖い。しばらくは騒々しい店となりそうなので、静観することにしよう。
食感はもっちりとしとしとで、皮はパリッと香ばしい。噛み締める程に口中に広がる至福の喜び。「チャパッタ」ってこんなにもおいしいパンなんだとつくづく感じさせられた。
公表できない秘密のレストランで、オーナーシェフいわく「恥ずかしいから絶対に公表しないで下さい」と男の約束だから仕方ないが、ヒントは「私の行き着けの店」ということでご容赦願いたい。パンは素人のオーナーシェフはこのところパン作りに随分時間を費やしているらしい。「イーストの発酵を促すために 12時間寝かせた生地〝ウェット・ドウ〟は長時間の発酵により微生物の働きが活発になり、より複雑で風味が豊かになるんです」とJBMのAクラスマイスター並みのコメントが返ってくる。「この最上質のエキストラバージンオリーブオイルにこだわりの塩・コショウをふりかけましたので、たっぷりつけてみて下さい」。「ローズマリーは漬け込んでないの?」なんて偉そうに応えながら食してみる。絞りたてのオリーブの実の新鮮さや、刈ったばかりの草のような青いニュアンス。さっぱりしているのに甘みとコクがあり、ピリリとした辛味と軽やかな苦味が後をひく。皮付きのリンゴと洋梨のスライスがごっそり入ったサングリラワインを飲みながら、いつしか目の前のチャパッタのバスケットは空になっていた。スライスキャロットを皿に残ったオリーブオイルにつけて食べ、今日の料理は乱切りにしたオーガニック野菜サラダとチャパッタだけの試食会。「お土産にチャパッタくれますか」との問いに「ここで食べるだけで勘弁して下さい」と試作品が公表されるのを最後まで拒んだ。
「オーガニックはおいしくない」という概念はもう過去の遺物だ。「オーガニックの野菜を食うぞ~」と思うと脳からおいしい神経が舌に伝達されてくる。先週書いた中川農相とのオーガニックなサンドウィッチの昼食会以来、デパ地下での品定めに余念がないのはミーハーなのだろうか。
日頃親しくさせていただいている業界の仲間と、農林水産大臣室にて中川大臣を囲んで昼食会を催すことになった。しかしおざなりのサンドウィッチではつまらないので、私の独断と偏見で中川大臣と親交の深いポンパドウル三藤社長にオーガニックなサンドウィッチを作ってもらうことになった。
食の安全・安心が声高に叫ばれるようになって久しい。消費者はオーガニック食材への関心を強めているに違いない。という訳で7月21日ポンパドウル商品開発室の渡邉チームが総力を挙げて製作した作品が大臣室のテーブルに並んだ。
ボックスを開けると、お洒落な包装紙にくるまれたオーガニックなサンドウィッチ3種類が出番を待っている。最初の一品のテーマは〝オーガニックとベジタリアン〟。私はこのバーンズが一番気に入った。フランス産オーガニックのash 0・65%使用の生地で作られたバーンズの中には、ほうれん草とチェダーチーズ、千切りのニンジンのマリネとレタスとレーズンが、オリーブオイル、塩、粒マスタードで和えてある。驚くほどライトな食感の中にシャキシャキとニンジンが存在を主張する。バーンズ自体も滑らかなテイストのこの一品は自然素材にこだわった渡邉室長の執念の作品と見た。
中川大臣から「三藤さん、これいけますよ、大変おいしい。お店に出しませんか」と絶賛され、三藤社長は「積極的に検討します」と返答。笑い声の絶えない和やかな昼食会となった。〝オーガニックは心も身体も和ませてくれる〟。
詳しくは弊社HP、山本雅子記者のブログをご覧ください。