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コラム 三寒四温

弊社の週刊紙「速報・製パン情報」から、好評の三寒四温をご紹介。
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常識の殻を破る

「食パンは、製パン企業の生命線なんです!」と以前私は、あるテレビ局の取材で、まず最初に声高に訴えました。しかるに、この消費者の食卓と直結している主食たる食パンの価格は、次々と押し寄せる主原料の高騰の高波に、昨年より3度にわたって値上げせざるを得ないという状況に製パン企業各社やその主原料を調達する関連企業を巻き込み、各社に減収減益の嵐を吹き荒らしました。
  スタグフレーションという名の強烈なサイクロンは、いつ熱帯低気圧と化して海の彼方に消えて行ってくれるのか。もはや"神"のみぞ知る異常事態に、世界レベルでアイデアを出しあってこの問題を解決に向けていかなければならないでしょう。バイオエタノールを始め、アラブ諸国による東南アジアの水田の青田買い等が行われている現在、39%という食料自給率の我が日本は、地球環境の温暖化で数十年後には九州以南では稲作が困難になるというデータは、何を我々がしなければならないのかを、つくづくと考えさせられます。私は、麦作を政府がもっと奨励して、世界の相場に左右されない生産量を目指してはどうかと思うのであります。
「たんぱくが少ないから国産小麦はパンに向かない」「麦の作付け面積は米の2倍必要だから」で結論付けしてしまっては、先に進みません。大麦はヘルシーで炊けばプルプルとした食感が現代人のニーズに合っています。もちろん栄養価も高く用途も幅広いものがあります。国産小麦はグルテンが低くても『おいしいパン』が出来る技術が我が国にはあります。過剰生産に悩む米の他用途利用もよろしいのですが、国産小麦でパンを作るその技術も常識に挑戦した結果、生まれました。たんぱくをいかに高めておいしいパンを作るかと冷静に考え、そして情熱を持って取り組まれた方がいたから、その技術は確立されたのです。今、その技術は安全性も認められ、国内に広がろうとしています。なぜか?それは最終消費者が「おいしいパン」だと評価しているからなのです。
  消費者はいつも考えて「どれが一番おいしくて安心・安全か」を厳しい眼力で商品群を一つずつ手にとって品定めしております。
  世界の中の一握りのファンドグループに踊らされて、物の価値が上昇しようとも、ビクともしない、しっかりとした企業人としての足腰を鍛えて、常識の殻を破ろうではありませんか。行政は、コメの生産調整をやめて、国産小麦増産のための施策を講じて頂きたいものです。

またまた、さぬきや

 無ろ過生原酒。最近、よく見かけるようになりました。といっても、高円寺の「さぬきや」での事ですが、先日は料理に合わせて2種類の今の時期でしか飲めない"無ろ過生原酒"を頂いてきました。
「無ろ過」とは読んで字の如く、活性炭でろ過していない生酒の事で、味はしっかりしていて、崩れないという利点はあるのですが、痛みやすいのですぐに飲まなくてはならない。という欠点は、酒好きにはそこが嬉しい"ごちそうさま"でございます。
 石川県は鹿島の御祖(みおや)酒造の「遊歩(ゆうほ)」。この酒にはイサキのお造りでどうぞ、という若旦那。上品にサクどりされた刺身の上には梅山椒のソースがかけられていて、ひと口噛みしめると、まず山椒がその存在をアピール、続いて和辛子が"ツン"と鼻腔をくすぐり、梅がイサキのプリプリな食感に加わり"これはソースの三重奏や~"と彦摩呂をパクってしまう程の驚かされる一品で、しかも"遊歩"を舌の上で転がすと、ほんのちょっと雑味を感じられますが、さほどうるさくなくて、舌に残った三味一体のソースを上品に洗ってくれます。その後の喉越しのなんと心地よいことか!
 次の一品は、三重県は名張市、木屋正酒造の「而今(じこん)」。これに合わせる肴は馬づらハギの肝作りに土作酢のゼリーと岩海苔が色よく上品に飾られておりまして、いわずもがな、相性は"バチ・グ~"で、これまたエド・はるみをパクってしまった私はオヤジギャグの連発に家内に肘打ちを喰らった次第であります。
 「さぬきや」は初夏の新創作メニューも続々で、「エンドウ豆のすり流しうどん」や「冷やしカレーうどん パートⅡ」など、遠くても一度は足を運ぶ価値のある酒とうどんの3ツ星店であります。「高円寺さぬきや」、営業時間18時~23時(日曜休み)、電話 03・3314・4488。

鍋前の天ぷら

 行きつけの某天ぷら店のカウンターの鍋前(店の責任者が天ぷらを揚げる真ん前の席)で、久しぶりに店長の妙技に酔いしれた。
「何か目新しい肴とタネはありますか」
「かしこまりました」と、店長はニコッとして調理場へ消えた。しばらくして出された肴は2品。熊本県は五木産の"山ウニ豆腐"とフォアグラの西京漬けだ。山ウニ豆腐はたくあん大に2枚に切られ、黒もじが添えられていた。その黒もじで少し腹に乗せて口に含むと、一瞬、沖縄の豆腐ようの味がするが、臭くなく、まるで上質なフォアグラのように舌の上で溶けていく。絹ごし豆腐をもろみ味噌に漬け込んだ店長自慢の一品だ。
「これ、フォアグラではなくて、山ウニだよね」
「はい、隣がフォアグラです」
  小さな古伊万里風の器の中には、クラッシュアイスが盛られ、上品に小さくスライスされたフォアグラの上には季節の木の芽が美しい。
「エーッ。上品な味だねー。それにしてもこのフォアグラ、ただものではないぞー」
「そうなんです。フレッシュなフォアグラを火入れせずに、西京味噌に漬け込みました」
  黒龍の八十八号の杯が進む。家内と顔を見合わせ今日のこの出合いに乾杯。
  次に出された礼文島の手作り塩ウニも絶品で、「あっ、そうか、あれは山のウニで、 これが海のウニなんだ」と、 納得させられる。しばし天ぷら屋にいることを忘れるほど驚かされる肴だ。お造りは、五島の石鯛と、鳥取境港のうすめばるともに活け造りでプリプリだ。天ぷらは活車海老から始まったのだが、どうしてもここにとりあげたい二品だけを紹介したい。最初は銀宝(ぎんぽう)。穴子を小さくして潰したような小さい魚だが、穴子より淡白な、さくっとした食感で今の時期しか食せない珍味の魚だ。 この銀宝は、天ぷらタネの四天王(車海老、小柱、ハゼ、銀宝)の一角をになう。次の一品、三重県は伊勢産の大あさりの天ぷらは、貝殻を2つに割った中にあさりのぶつ切りと、しいたけと生姜の千切りが入り、貝殻ごと天ぷらにする。割醤油を上から垂らして食べると、アサリはほど良いレアで旨味のエキスが口中に広がり、生姜が後を追って自己主張する。「俺を忘れるなよー」てな感じで、生姜がないと、この天ぷらは完成しなかっただろう。この大あさり、本当の名称は"内ムラサキ貝"というらしい。一般には、お化けあさりとか大あさりとか呼ばれている。

優しい微笑み

 私が生涯で尊敬してやまない第一屋製パン創業者、故細貝義雄さんの奥様、博子さんの告別式を告げるFAXを目にして、こみ上げてくる涙がとまりませんでした。その日の夜、私は夢を見ました。そのお顔は気品があって、優しく微笑んでいらっしゃいました。
  35年程前の夏の暑い日、私ごとき若輩者を自宅に招いて頂いた折、キウイフルーツを土産に玄関で奥様にお渡ししたところ、「あなたー、菅田さんからキウイを頂きましたよー」と奥に向かって透き通った声でご主人にお声を掛けて頂いた一言が、何故か未だに脳裏から離れません。その時に頂いたお手製のカレーライスには、生玉子の上に生クリームがかけられていて今でもその味は忘れないほどおいしくて、おかわりしたところ、「喜んでいただいて嬉しいわ」と私の顔を見て微笑んでくれました。その時の笑顔はお通夜の祭壇一杯に飾られた白菊の中央に飾られた遺影のお顔が当時を偲ばせられ、夢そのもののお顔と同じでした。
「とても残念です」
この一言しか、会葬客のお礼に並んでいらした理榮さんご夫妻にかけられませんでした。
本当に残念でなりません。
  私がご自宅で最後にお会いしたのは15年前、お身体を壊されて既に引退していらしたご主人に、私と家内で手作りのラーメンを食べていただこうと訪問した日、ご不自由な手で丼をお持ちになり、最後の一滴まで完食されたのを見て、「菅田さん、めずらしいわ。主人はラーメンは大の好物だけど、本当においしかったのね」と、満面の笑みで話された事もつい昨日の事のようです。。
  天国には、ご主人も、私共の両親も待っております。昔は、よくご一緒した海外旅行。今度は天国で、どこの名所巡りをするのでしょうか。どうぞお安らかに。ご冥福をお祈り申し上げます。合掌。

弊社社長 菅田耕司のコラム


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