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コラム 三寒四温

弊社の週刊紙「速報・製パン情報」から、好評の三寒四温をご紹介。
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五感の涼

 梅雨のない北海道を除いて日本列島各地では本格的な梅雨のシーズンに入りました。色とりどりの傘が行き交う街の風景を銀座のレストランから見下ろしていると、ジーン・ケリー主演のミュージカル「雨に唄えば」のシーンとダブってなんだか街中の人々が今にも踊りだしそうな妄想にとらわれます。
  梅雨の合い間の真夏日の昼下がり、涼しげな夏和服に白の日傘の美人さん。思わず振り返ってしまいます。名古屋帯には朝顔が描かれて白い襟足が眩し過ぎます。風がそよいで清楚な花の香りが鼻腔を一瞬くすぐり、そしてスーッと景色に溶けて消えていきました。心地よい下駄の音がそれらと一緒に遠ざかっていきます。側道にそっと咲く紫陽花から一滴の溜まり水がこぼれます。赤坂アークヒルズ界隈の桜坂通りの桜並木は新緑の葉に覆われ、優しく吹く風に木漏れ日が石畳の歩道に揺れています。「夏はいかにも涼しきように」と千利休は書にしたためました。着る人も、見る人も、その風景も、どれもが溶け合って涼しげな、まるで一幅の絵のような光景でございます。これが〝ワビ・サビ〟なのでしょうか。それにつけても若い女性の昨今のファッションはいかがなものでしょうか、目のやり場に困ります。
  もうすぐ小暑、日増しに暑くなるこの季節、真夏に向かってだらけることなく、キリリと生活する習慣を持ちたいものです。夏といえば、金魚、団扇、花火、手拭、風鈴にところてん等々。ベーカリーの店内外もこれら夏の風物詩を生かして五感を働かせた〝涼〟の演出はいかがでしょうか。
  麦藁帽子に短パンを履いたおじさんが自転車を止めて鐘を鳴らしてアイスキャンディを売っている、金魚売りや風鈴売りのおじさん達は、どこへ行ってしまったのかなぁ……。
  きんぎょ~え~きんぎょ、金魚はいらんかね。

万歳!コンビーフ缶

 スパムの缶詰。ここ5~6年、静かなブームになっているとかで、どこのスーパーに行っても必ずと言っていい程に、一番目立つ棚に陳列販売されています。この〝スパム〟半世紀以上前からニューヨークのスラム街に住んでいた若者達のお助けフード缶だったのをご存知ですか。とにかく、安くて栄養があって簡便でいつでもどこでも空腹を満たしてくれる、そして料理方法もそのままかぶりつく、野菜と一緒に炒める、スープに入れる、サンドウィッチにする、など多岐に渡ってそのレシピは受け継がれてきました。でも、アメリカの高度成長期にはその存在も忘れかけていたのですが、オイルショックを機に見直され「オー!スパム!」という歌までレコードとなってヒットチャートの上位にランクインされ復活を遂げたのです。それからは、それまで以上に日本人もハワイへ行くようになり、誰でもが知っているスパムムスビをABCマートやゴルフ場の売店で買い求めて今ではすっかり認知され、マクドナルドの朝食にはスチームライスとスクランブルエッグ、そしてスパムが入っているスパムプレートは、ロコを始め観光客にも大人気のメニューで私もハワイに行けば必ず一度は食べております。新宿にはスパムムスビだけ売る専門店もありました。沖縄では戦後の食糧難に駐留米軍よりスパムが伝わり今では本土以上に需要があります。ゴーヤチャンプルーやみそ汁にまでスパムが入っているのですよ。そう言った訳で沖縄では生活に密着している食料として関税も低く、とても安く購入できます。東京の3分の1位の安さ!ですから驚きです。
  スパムと並んで我が家のお助けフード缶といったらコンビーフ缶でしょう。 〝リビー〟の大きな缶詰1つあれば1週間の朝の献立が出来上がりです。スライスして醤油を付けて白いご飯で、キャベツと一緒に炒めて、炒飯で、トーストした食パンに焼海苔とコンビーフをのせ醤油を垂らしたサンドウィッチ、パスタに、焼きうどんに…きりがありません。そして飽きないから不思議です。料理万能のコンビーフ缶とスパム缶、いい仕事をしてくれます。
  このコラムの校正をした弊社の北嶋会長が、小さい頃初めて口にしたコンビーフの缶詰を食して、「あー、世の中にこんな美味しいものがあるんだーと子供心に感じたものだよ」と、目を細めてつぶやき当時を偲んでいました。

串天ぷら

 6月1日に大阪、北新地のイタリアレストランにてベーカーズタイムス社、山村一政前社長のお別れ会が開催され、全国各地より、氏と親交が深かった約百名の業界人が追悼写真の飾られた祭壇に麦の穂を献花して私も最後のお別れをしました。
  さて、久々の大阪で北新地となれば、山村さんも愛したこの街で供養のためにも食って飲むか!という訳でありまして今回は新地一丁目にある小洒落た串天ぷらの店「ひろ木」の暖簾をくぐりました。〝串カツ〟ではなく〝串天ぷら〟にこだわるこの店は店内に入ると、一瞬高級な寿司屋のような佇まいで、白木のカウンターの上にはガラス張りのタネ入れの冷蔵ケースが置いてあります。今日は、モデルをしているご主人のお嬢さんも手伝いに来ていて店内に華を咲かせています。注文はもちろん〝店主おすすめコース〟です。こぼれんばかりに注がれた店主おすすめ、限定3杯迄の麦焼酎のロックに口を運んで啜ってから、いざ戦闘開始!次から次へと串天ぷらがひと節に切られた孟宗竹の中に金網を置いた器に串揚げが置かれてゆきます。この店のルールは「もういいよ」というまで、延々と串が出てくるのです。最初の一品は車海老4本!「たっぷりの塩にレモンを絞って溶かしてから少し付ける」店主から指示がとびます。「左のソースにはキャベツを手で千切って付けて食べてね。田楽味噌はお好みで!」串を置く度に指示がとびます。「海老は尻尾まで全部食べてね」「はい、万願寺唐辛子1本揚げ!」天ぷら紙に半分包まれて、これは手渡しです。ここの揚げ油は太白ごま油でしつこくありません。だから「はい、ここまで」が言えずどんどんいけちゃいます。新玉ネギとニンニクの串は最高の相性ですね。太いアスパラ一本揚げも紙に包んで「ホッホッ」と穂先からかぶりつきます。12~13本も一気に食べるとお腹も満足してきて「ここいらで休憩します」と店主に宣言。すると店主は「口直しに、レバーの薄切りと自家製そばを食わなくちゃ、帰さないよ」と中ばおどされて「はい、お願いします」。最初に出てきた牛レバー刺しはフグ刺しよりも薄くスライスされていて、浅葱の小口切りと塩、レモン、ごま油だけの味付けが食道の油を油で洗うような、すがすがしいデザートのごとき一品でした。最後に出された7種の漢方薬が練り込まれた自家製のそばは店主のお嬢さんが私の横で〝とろろ〟と〝鶉の玉子〟を割り入れて手際よく超スピードでかき回して供してくれました。「はい、どうぞ!」泡だらけのそばをズルッズルッと大ぶりに口にほおばれば「な、なんなのだ、このそばは!」箸を休める間もなく一気に完食してしまいました。「串カツの店なのに、そばの名店を越えている!」、「ひろ木」ただ者ではありません。40年の歴史が今も味を伝えています。
  さて、次は山村さんが愛した新地のラウンジで一杯飲んで帰るとしますか。

煮込み横丁

 私は〝モツの煮込み〟が大好きであります。ですが、どこの店の〝煮込み〟でも良いというのではありません。こだわりがあるのです。モツの部位、名称は分かりませんが、薄くてぺらぺらしていて丸まっている〝モツ〟はいけません。しっかりと厚さ1㎝以上ある肉厚のものでないと歯ごたえを楽しめません。豆腐は必需品ですね。味の染みた絹ごしはモツと出会うために作られた逸品といっても過言ではないでしょう。あとはたっぷりの小口に切ったネギが煮込みを覆っていること、そして味噌味であること。色々と〝モツの煮込み〟を食べ歩いていますが、なんといっても私のお気に入りは浅草寺裏に100mにわたって赤提灯が並ぶ通称「煮込み横丁」にある「くしもつ」ですね。店名の通り、串とモツが売りの店なんですが、鯨のコロッケや鱈子の和え物も大好物であります。塩味の牛モツ、味噌味の豚モツ、醤油味の牛スジの3点セットはお得で〝かなり美味い〟。特に、塩味の牛モツは大ぶりの具を口に入れ、一噛みすると震えがくるほど「オーッ!これだ、これ!」、その品の良い塩味の中にプルッとした歯ごたえの後にくる絶妙な食感と旨みに口中が〝お祭りマンボ〟といったら不適切かなー、筆舌に尽くしがたい、そして優しさのある牛モツなのであります。モツ串の盛り合わせもお得で美味しいですよー。
  もちろん、合わせる酒は酎ハイで決まりですね。牛モツでグイ、豚モツでグイ、牛スジでグイグイと大ジョッキ3杯はこの3品だけでいけちゃいます。先程の〝鱈子の和え物〟なんですが、実はもう一品〝味噌きゅうり〟を頼んであったので、定番のきゅうりに味噌を付けて食べていたら、「あら、あなた、これ抜群の相性よ!」と、きゅうりに鱈子の和え物をたっぷり付けて家内から〝おくちアーン〟で食べさせてもらったところ、超ビックリ!両端に味噌と鱈子の和え物を載せて〝ダブル・レインボー〟なんて、はしゃいでしまいました。それからというもの毎度このメニューは最初のオーダーの定番となりました。
  汗ばむ梅雨の時期、仕事帰りの〝一杯〟は妥協して入る店ではいけません。美味いものを食べに行く努力は仕事にも生かされることでしょう。

弊社社長 菅田耕司のコラム


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