〽馬鹿は死ななきゃーなおらない
先週のコラムで寿司を取り上げましたが、皆さん、〝寿司〟と言われて連想するのは何ですか? 私の場合は♪トロは中トロ、コハダ、アジ、スシ食いねー♪って、すぐに反応してついつい唄ってしまいます。シブガキ隊のこの歌は一世を風靡しましたね。もう、耳に焼きついています。そして、寿司といえば何と言っても強烈なインパクトでイの一番に連想できるのは、ご存知、遠州森の石松、金毘羅様への代参帰りの三十石船の中でのくだりですね。広沢虎造のしわぶき声の節まわしに引き込まれます。八軒谷から伏見へ渡す渡し船、大阪本町橋の名物押し寿司を脇置いて、ふちの欠けた茶碗で酒を呑みながら乗り合い客のつまらない話を聞いている森の石松。お国自慢に名物自慢、聞いているうちにバクチ打ちの話になり、海道一の親分の話になった。何人かの親分衆の噂話が聞こえてくる。と、その時、横になって聞いていた男がたまらず起きあがって、「何を四の五の云ってやがる。黙って聞いていたが、もう我慢ならねえ。海道一の親分は、なんと云っても駿河の国が安倍郡(あべごおり)、清水港の有渡(うど)町に住む山本長五郎、通称、清水の次郎長でい!」。待てば海路の日和ありとはこの事だ、とばかりに喜んだ石松は手招きをして「オイオイ、そこの客人、こっちへ寄れよ、ホラ、寿司食いネエ、酒呑みネエ、江戸っ子だってねェ」「神田の生まれよ」「それで、次郎長の一番強い子分は誰でェ」と問いただすと、「いわずと知れた遠州は森の村、森の石松をおいて、他にはいねえぜ」。気を良くした石松は「ホラ寿司食いねえ、もっと酒呑みねえ」。と、盛り上がるのですが、この場面は水戸黄門様の印籠のくだりと同じでスカッといたしますねなんとも楽しいお話ではありませんか。ところで、この中で気が付いたこと、ひとつございませんか。そう、「江戸っ子だってね、寿司食いねェ!」と石松さんが振る舞っている寿司は、ナント、大阪の〝押し寿司〟だったんですよ。皆さんご存知でしたか。
それにしても浪曲は素晴らしいですね。広沢虎造は天才です。いつ聞いても鳥肌が立って感動して、あまりの語りのうまさに、主人公に好感が持てて涙があふれ出てきます。歳を重ねると情にもろくなり、涙腺がゆるみっぱなしです。さて、しまいに、この話の中で当時の東海道で、子どもたちによく歌われていたというシブガキ隊より有名な〝森の石松子守唄〟の一節で締めましょう。
〽 馬鹿は死ななきゃー、なおらない
私の事ですね。さて、今夜も寿司を食べに行きますか。
それにしても浪曲は素晴らしいですね。広沢虎造は天才です。いつ聞いても鳥肌が立って感動して、あまりの語りのうまさに、主人公に好感が持てて涙があふれ出てきます。歳を重ねると情にもろくなり、涙腺がゆるみっぱなしです。さて、しまいに、この話の中で当時の東海道で、子どもたちによく歌われていたというシブガキ隊より有名な〝森の石松子守唄〟の一節で締めましょう。
〽 馬鹿は死ななきゃー、なおらない
私の事ですね。さて、今夜も寿司を食べに行きますか。