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コラム 三寒四温

弊社の週刊紙「速報・製パン情報」から、好評の三寒四温をご紹介。
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春のいぶき

庭の大きな桜の老木は、萌木色のつぼみを無数に付けた枝を八方にたなびかせて威風堂々とたたずんでおります。気象庁の開花予報によると今年はいくらか開花が遅れそうで、小中学校の入学式のころには満開の桜が皆を祝福してくれることでしょう。 
 我が家の桜の老木もまた、開花のその時をじっと待っているのでしょうか、桜の脇に咲く身の丈ほどの椿も一月ごろからつけた小さなつぼみがプクプクとふくれて、桜と開花を競っているかのように紅色の頭がそこかしこに覗いています。八つ手の実をうぐいすがつがいで食べに来ました。満開の時に帰って来て鳴いてほしいものです。 
 雪の重みにしなだれても、たわわに身にまとった真っ赤な実を落としもせず私たちの目を一冬の間楽しませてくれた万両の実は、いつの間にか全て落ちて春の主役たる桜たちにバトンタッチしたのでしょうか。花たちが季節の変わり目を教えてくれます。必ず訪れる今年の冬にまた万両は私たちを癒してくれることでしょう。行きつ戻りつやっとやって来た春は、生命の息吹で満ち溢れています。そして年月はかくのごとく決まりごとのように単調に過ぎていくのです。
 さて、春を迎えた来る4月19日は、弊社主催の創業65周年記念コンペが例年通り程ヶ谷カントリークラブにて開催されます。
 そして、運がよければ″花見ゴルフ〟と洒落たコンペになりそうです。

オノマトペ

 目覚めの朝、家内のベッドにはきちんとカバーが掛けられていました。「そうか、昨日、上海へいったんだな」。愛犬が私の顔をペロペロと舐めまくります。「分かった分かった、よし、散歩に行くか」。早朝のさわやかな散歩を終えて、家内が長男の赴任先の上海へ共に暮らすために2人の孫を連れて留守にする11日間の全メニューを暇に飽かせて昨夜書き記した紙を見る。朝食メニューは、ご飯、焼海苔、納豆、大根のつけもの、キャベツの味噌汁、とありました。我ながら実にマメな事でもありますね。そして健康に気をつけた理想のダイエットメニューです。冷や飯を茶碗にラップをかけてレンジであたため〝チン〟とひと鳴り、出来上がりです。この〝チン〟という音は素晴らしい音ですね。当然、鳴る予想はしているものの、突然の〝チン〟に驚く訳でもなく「うるさいな」と感じる訳でもなく、急がされる訳でも、ウキウキする音でもないのに、自然と耳に入って抜けていってしまうオノマトペの不思議な音だと思うのは私だけでしょうか。ちなみにこの〝チン〟を辞書で調べてみると「電子レンジで調理すること」、平仮名だと「鼻をかむこと」と、ありました。
 〝チン〟したご飯を、いつもの事ながらコーヒーを淹れるのに没頭して忘れた私は食パンを2枚トーストしてマーガリンを塗り、メニューとは違う朝食を済ませます。昼は麻布のフィットネスクラブで汗をかいたのち、アイスティーとハンバーガー、と書いてあるからその通りにしましょう。夕食は桜上水まで健康のために一駅歩いて今日一日に感謝してビールと焼酎のロックで一人寿司。夜の愛犬の散歩を済ませて一日のしめくくりは、寝酒のウイスキーロックをベッドの脇に置いてカチャカチャとTVの選局です。こんな時、家内は必ず「せわしいわね!」とちょっぴり怒るのですが、今夜は静かです。居るとうるさい、居ないと淋しい。そんなものです還暦過ぎの夫婦なんて。「ちゃんと散歩に連れて行ってるかな」と犬の事を心配しても、旅先では私の事など思い出す事もないでしょうね。
 翌朝、茶碗に冷や飯を盛ってラップして、レンジの扉を開けると、昨日の茶碗がありました。アラアラ。では、千切りにしたたくあんを入れて好物のタラコで今朝は湯漬けを2杯いただきますか。

小さな喜び

 私達は今、人類としての発展の歴史の中で20世紀を境に自らのニーズを満たし野心を実現させるために途方もない急激な発展を遂げてきました。しかしこの見返りは将来の私達の子孫に確実に損失として受け継がれることでしょう。そして現実の日本では資源不足や食糧自給率の伸び悩みの中、少子化による弊害までもがじわじわと社会をむしばんでいます。
 総務省の国勢調査によると、2005年までは5年刻みに約2%の割合で単独世帯が増えています。そしてこれからも緩やかにその割合は増加して、2030年の予想値はナント、37%超えになるそうです。もはや「一家団欒の食卓」というキーワードは死語になるといっても過言ではないでしょう。
 21世紀の現代に生きる私達を取り巻くあらゆる家電製品やコンピューターや最新鋭の製品は、今の文化文明社会の中で無くてはならない生活必需品となりました。しかし、それゆえに世界では大量の資源を急速に消費して枯渇=破滅に一歩々近づいているのも事実です。ある国では食糧が不足して大量の餓死者が続出しているにも係わらず、その国の政府は食糧を輸出して富を得ているという不合理。つい最近報道された大阪の一家3人の餓死事件や今や日常となった独居老人の孤独死の問題は他人事ではありません。その反面、高度医療による延命。″進歩〟とは何でしょう?
今朝、ワールドビジョンを通して私が援助しているエチオピアのチャイルドから手紙と成長記録が届きました。その中にあった写真は、幼い兄と妹の二人がゴミの山の中で廃品回収しているショットです。″生きる〟ための、何のためらいもないごく日常的な毎日の仕事なのでしょう。でも、とびっきりの笑顔がありました。それは、ワールドビジョンから援助されるノートと鉛筆を持って学校で友達と一緒に勉強できるという喜びがあるから。
 チャイルドや私達も含めて、こんな小さな喜びで満足していてはいけないと思いますが、行動しないよりは良いことだと思っています。「次代を考えるよりは今を考える」これが大事だとつくづく思える今日この頃です。
 マタイの福音書6章34節より「だから、あすのための心配は無用です。あすのことはあすが心配します。労苦はその日その日に十分あります」。

行事食

 大晦日に年越しそばを食べて、来る年も細く長く達者に生きる事を祈り、一年を締めくくる食の行事は、年が変わった翌日には縁起をかついだ料理を重箱に詰めたおせち料理やお雑煮で正月を祝い、1月7日には食べ疲れた胃を休め、そして冬に不足しがちな野菜を補うために、七草粥をいただく。日本古来の食文化は世界に類を見ない素晴らしい文明の歴史なのであります。
 節分の恵方巻き、バレンタインデーのチョコレート。先週はお雛様で日本中の多くの家庭ではちらし寿司と、蛤のお吸い物を召し上がられた事でしょう。この季節行事の食べ物を数えてみて、たくさんあるのには驚かされます。商魂たくましい商人の〝業あり〟に笑ってしまう〝文化〟も垣間見えまして、それでも楽しく食べさせていただいております。
 ベターホーム協会の調査によると、よく食べる行事食の一位は「年越しそば」で、おせち、お雑煮と続いて4位に「クリスマスケーキ」、5位に「土用のうなぎ」と続きます。中でもベスト10に入った8位の節分の恵方巻きは、59・7%の人が「食べる」と答え、しかもここ数年の急激な伸び方とかで、考えてみると節分の時期にはどこのコンビニでも派手なのぼりで恵方巻きという存在を初めて知った人が多かった事と思います。製パン業界も一丸となって王道たるパンで行事食に取り組んでみてはいかがでしょうか? パンと共に新たなる日本の食文化の形成、なんてちょっと格好いいですね。
 早いもので来週の11日は東日本大震災から、一年が経ちます。未曽有の被害を生んだ大震災と巨大津波、そして原発事故では未だに自宅へ戻れない人々の悲痛な声がメディアを通して今でも聞こえています。それなのに大きな被害を蒙られた方々への善意の寄付やボランティア活動は、〝時〟が少しずつ記憶から消していった感が否めません。とても淋しいかぎりです。被災された皆様が日常的に行事食を食べながら笑える一家団欒の日が、一日も早く来るようにと私は祈ります。

弊社社長 菅田耕司のコラム


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