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コラム 三寒四温

弊社の週刊紙「速報・製パン情報」から、好評の三寒四温をご紹介。
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酒と肴とカラオケと

 招待を受けて久し振りに赤坂の老舗料亭の暖簾をくぐりました。かつては政・財界の要人が足しげく通い、黒塗りの大型車が列をなして玄関番の出迎えを受けていた面影はどこにいってしまったのか。花街の賑わいも感じられない、そんな淋しい思いを抱きながら案内された今宵は別棟の割烹でのテーブル、小料理と酒を楽しむ趣向のようです。「これは、座敷よりも楽しみだ」。乾杯のビールで渇いた喉を潤し、とりあえずの枝豆をつまみます。(…さすがだなー、莢の切り具合と茹で加減、そして塩の按配がブランド枝豆の旨さをさらに高みに引き上げている…)と、心で感心しながら、ひと粒ずつ味わいながらも話は弾みます。
 話し込んで盛り上がる我々がなかなか注文せずに痺れを切らしたのか、和服姿の仲居さんが注文を促します。本日のメニューはと…。珍味だけでも二十品ほどあるので考えてしまいますね。「酒席ですから、全部珍味で決めてもいいですねー」と招待者が背中を押してくれます。「では、焼き松茸とイワシ干し、切り干し大根に谷中とコノワタをお願いします」。もちろん品書きには値段なんて野暮な書き込みはありません。そこへ女将が「いつもありがとうございます」と挨拶にやってきました。どうやら、お座敷はお茶っぴきみたいですね。割烹のカウンターには箸と箸置き、そしてグラスが、椅子の数だけ用意されています。他に客は4人連れだけ。少し淋しいかも。それは、ネックになっている〝一見(いちげん)様おことわり〟の古き良き時代からのしきたりが関係しているのかもしれません。
 「そろそろお食事のご用意をしましょうか」と仲居さんの声に、我々もめいめいのオーダーで応えます。「小柱のかき揚げで小さな天丼と、赤だしもつけてね」「僕はキンキの煮つけに白いご飯、味噌碗はいらないよ」「私は海苔茶漬けで」。それぞれの注文に、その人の好みが垣間見えるのが楽しいですね。
 私は隣のカラオケバーで、オールド・パーのロックを飲りますから、締めはパスです。ちなみに、なぜオールド・パーなのでしょうか? 機会がありましたら、ぜひオールド・パーのボトルを傾かせてみてください。「へえー」と驚くほど、上手に立ちます。ですから、「倒れない=政権が倒れない」というゲン担ぎも込めてオールド・パーは政治家が好んで飲んだらしい、という本当のような嘘のような話が赤坂界隈にはあるのです。
 さすがに老舗料亭の料理です。料理はすべてにパーフェクト、一品々に作り手の真心が、見て、箸をつけて味わえば伝わってきます。進肴も強肴も、素材をいかに活かして楽しんでもらおうかという姿勢の店は、やはり〝一見様おことわり〟が似合いです。アベノミクスでデフレによる景気低迷から一日も早く脱却して、タニマチに活気が戻る日を楽しみにしています。おいしいお酒と肴と甘い歌声を、ごちそうさまでした。

分とく山

高校生球児の聖地、阪神甲子園球場で連日の熱戦が繰り広げられている中、東京では全国中学野球選手権大会(通称ジャイアンツカップ)が開催されていたのをご存知でしょうか。この大会は「日本野球連盟」公認の、全国の中学生による硬式野球チームの大会で、日本各地より一〇〇〇を超えるチームによるトーナメント戦を行い、先日、その頂点を決する優勝決定戦が東京ドームで行われました。この大会の常連チームである大阪府の〝枚方ボーイズ〟に対するは、初参加の福岡県〝糸島ボーイズ〟。実はこの〝糸島ボーイズ〟はリョーユーパングループの北村俊策会長がオーナーなのです。北村会長はご存知の通り東京大学野球部の出身で、かつては自社率いる社会人チームのオーナーでもありました。野球に対する思い入れはいつも熱く、特に少年野球の育成協力に〝力〟を惜しまず注ぐ北村会長の姿勢は、九州財界でもその人徳を高く評価されています。〝糸島ボーイズ〟は初参加にして決勝戦へ駒を進める快挙を果たしましたが、残念ながら優勝旗を手に凱旋帰福を遂げる事は叶いませんでした。しかし、この大会を通じて多くの成果を得た事に違いありません。
 東京ドームで観戦した翌日、北村会長の拠点である広尾ガーデンヒルズにほど近い、一つ星の日本料理店「分とく山」にご招待していただきました。オープンキッチンでぶ厚い桐一枚板の白木カウンターへ案内されるや否や、メディアにてよく拝見する野崎洋光シェフが挨拶に来てくれました。今からシェフの創作料理が堪能できるなんて、しかも目の前での調理とあれば期待値はMAX!です。涼しげな小さなガラスの器にちょこんとのせられた先付と、美しい花盆のように飾られた前菜には、八海山の吟醸をキリッと冷やした江戸切り子のぐい呑みにて味わいます。鱧の碗、お造りは鮑と鰈の刺身、添えられている江部胡瓜は種がなく、手づかみでいただきました。進肴の鮑おろし蒸しは、大根おろしが鮑のうまさを見事にふくらませています。組肴は「季節の小さなお皿」という意味でなのですが、小人の国のお花畑のような小さなお料理の組み合わせはメルヘンチックいっぱい、夢も盛られていました。箸をつけるのを躊躇するほどです。強肴はメインディッシュ、レア―の和牛薄切りと茄子に香味ゼリーがかけられています。そして今日一番の楽しみの〝食事〟では分とく山の名物、土鍋で炊き上げる、今宵は新生姜とご飯に生海苔を合せた炊き込みご飯です。おまかせコースの肴と量が多いのに、ご飯はおかわりをねだるほどに、そして赤味噌の止め碗で楽しまさせていただきました。最後は黒蜜のかかった豆乳プリンに小口切りのスイカの〝甘味〟デザート。底に少したまった汁を飲み干すほどに堪能しました。
 一足先に帰福した少年球児達も、今日は飛びっきりのごちそうをいただいている事でしょう。

ラマダン

先月、モロッコ王国のカサブランカで日本料理の〝Iloli〟を経営する、元ロブションのスーシェフ古河君の奥様、ノエルさんが単身で来日されました。高円寺の〝さぬきや〟にて久し振りの再会に、話は尽きません。実はノエルさん、けさ日本に着いたばかりなのに来日の2カ月前から楽しみしていたリクエストは、さぬきやのカウンターで日本酒と肴をいただく事。「あれ? ノエルさんはイスラム教徒なのに、ラマダンは大丈夫なの?」「私は旅行者ですから少しだけOKです」「それでは少しずつ、たくさん飲りましょう」という訳で18時頃よりノエルさんの友人2人、そして私の家内とワイワイおしゃべりしながら飲み進みます。と、日も落ちた20時頃に「お待たせー」とモロッコ王国のアルール駐日大使と歌子夫人がやってまいりました。敬虔なイスラム教徒の大使と夫人はラマダンを厳守した生活スタイルですから、日の出より日没までは水も、紅茶も、お菓子も食事も一切、口にする事はありません。
 今、話題になってますね。大相撲西十両九枚目の大砂嵐関はエジプト出身のイスラム教徒です。場所中はラマダンなので朝食は早朝の3時、そして取り組みが終了しても日没はまだ。この時期ですと19時20分頃ですから、ここでやっと昼食です。こんな状態で勝ち越したのですから、すごい力士ですね。取り組みを見たのですが、全力相撲ですよ。異国で頑張っている彼には、きっと神様が見守ってくれているのでしょう。
 日本に赴任して5年が経つアルール大使ご夫妻とはよく食事をさせていただいているのですが、居酒屋スタイルのうどん料理店の〝さぬきや〟のカウンターに陣取り、厨房の若旦那から料理を直々に手渡しされて説明の薀蓄を聞いてからいただく、といった趣向はさすがに本日初体験という事で「楽しい! おいしい!」と歌子夫人はハイテンション。全粒粉の太打ち麺と蛤の小さなお椀には「どうしたらこんな料理ができるの?」と驚愕されていました。大使も私の隣で「お・い・し・い・で・す・ね」とウインクの連続です。ただし、お酒はありません。次の日は、市ヶ谷の大使公邸にてラマダンを祝う〝フトール〟というセレモニーのディナーに夫婦して呼ばれています。でもね、アルコール、もちろん無しなんです…。

弊社社長 菅田耕司のコラム


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