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コラム 三寒四温

弊社の週刊紙「速報・製パン情報」から、好評の三寒四温をご紹介。
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アメージング・テイスト

 築地魚河岸場外市場に長崎県漁連の販売所があります。ここの魚は全て一級品、そこらの魚屋さんやデパ地下の魚売り場では、めったにお目にかからない長崎発の新鮮な高級魚や左党垂涎の珍味や酒肴が所狭しと並んでいます。

 この時期のおすすめは何といってもトラフグです。養殖ですが新鮮なトラフグの〝身欠き〟が一本単位でパック詰めされていて約3500円くらいですからお値段以上のお値打ちものなのは間違いありません。身欠きとは、ヒレ、皮、頭、背が切り分けられてそれらを落とした骨付きの身の状態でトレーにパックされたフグのことです。家での仕事はまずヒレを台所のガラスに貼り付ける。二~三日で乾きますから後はあぶってヒレ酒を作るのですがこの生干しは濃いヒレ酒が三杯作れる優れもので、市販されている出来合いの乾燥フグヒレなど及びもつきません。

 次は皮の湯引きです。沸騰したお湯にさっとフグ皮をくぐらせ流水で洗う。あとは細く切ってもみじおろしとアサツキの小口切りをたっぷり入れたポン酢につけていただけば一年待ったかいがありますね。プチプチ、コリコリ、そしてアレー?溶けてゆく――。といったコラーゲンたっぷりな食感に、辛口酒の熱燗でつくったヒレ酒が旨さを押し上げてくれます。ですから夫婦で顔を見合わせ笑うしかありません。テッサは薄く刺身を引く技術がないので丸ごとの身を湯にくぐらせたフグの身をちょい厚めに切って、芽葱を巻いて皮同様にポン酢にくぐらせ口に運べばテッサ10枚分程のぜいたく気分です。この食感!この食感!

 今宵は酒のアテということで鍋ではなく残りは唐揚げにしましょう。ここで私からのおいしい唐揚げの作り方を伝授しましょう。ある有名な寿司職人からの直伝です。ブツ切りにした身付の骨と頭と、背肉を酒1、醤油1、卵黄1の割合でとき混ぜて30分位漬け置きしてからザルにとって片栗粉をまぶし、170℃で二度揚げします。ああ、なんという〝アメージング・テイスト〟なのでしょう。

 来週も築地に買い出しに行くとしますか!

やさしいカレー

 中央線高円寺北口のビジネスホテル脇の細い通りの先に、40年以上続けて営業している「丸屋蕎麦店」があります。そこは母との想い出の店。私は5歳の頃から50年近く高円寺に住んでいました。

 昔の蕎麦屋のカレーライスは黄色くてちょっと粉っぽかったような気がしました。多分独自のレシピなんかなかったんではと思うほどに日本全国同じ味だったように感じているのは私だけではないはずです。それは〝カレー〟なるものが蕎麦屋の看板メニューとして徐々に確立されていく初期だったのでしょう。ですから、味が濃かったり薄かったり粉玉が残っていたりと散々でお蕎麦屋さんの試行錯誤の時代のカレーライスを食べている時に私はウスターソースが必要でした。これをかけるとどこのカレーもみーんな同じ味になります。ご飯にまでかけて食べているのは今も同じです。

 母に連れられて丸屋でのオーダーは母はカレー蕎麦、私はカレーライスです。あんかけの熱いカレー蕎麦の汁をお洒落な和服に飛ばさぬように細心の注意を払って上手な箸捌きですする母。私はスプーン山盛りのご飯に十分カレーソースを絡めては口に運び続ける。カレーを食べるときはふたりとも無言でした。母と一緒にカレーを食べたのはこの一度だけ。そして母と一緒に丸屋の暖簾をくぐったのも、この一度きりでした。丸屋の店先にはリアルな食品サンプルのソバや丼物が所せましと飾ってあるのですが、店に入ることもなく、40年間通り過ぎていました。床屋の帰り際、初老となった店主が母の話題を少し振りました。そしてお互い、年を重ねたね、と。そんな矢先に丸屋の前を通った時、呼ばれるようにカレーライスのサンプルが目に入ったのです。40年振りに暖簾をくぐりました。さほど昔とは変わっていないような雰囲気の中、母が呼んだのかもしれません。

「やはり粉っぽいな。ウスターはいらないか。いやいや、やはり少しかけてみましょう。厚切りのタマネギと小さな豚バラが2切れずつ、ゴロゴロ具が入ってないのもいいね。うんうん、この味この味」。

 目の前には和服姿の母がカレー蕎麦をおいしそうにすすっているかのようにがなつかしく思い出されるやさしい味でした。

築地場外のカレー

 正月明けの築地魚市場初競りの日に、無性に食べたくなったカレーライスを求めて昼前に場外へひとり繰り出しました。築地通りに面した通路には有名なラーメン店ときつねそば店が軒を構えているのですが相変わらずの大盛況です。飛び交うことばは中国語と韓国語ときたま日本語といった調子で、なるほど反対側の道路には数台の大型観光バスが停車していました。東京観光の目玉のひとつで、ここでラーメンときつねそばを食べるのが〝通〟なんだとか。そして築地に来たら、包丁を買うのが最近のアジア系観光客の行動パターンだそうです。

 その人込みをかきわけて、カレーライスを出すカフェに向います。吹きさらしの7人程座れる奥行の狭いカウンターの中には、人の良さそうな老夫婦が老舗カフェを何十年と切り盛りしています。客は市場で働く人達がメインで、観光客は「何かしら」という具合で素通りです。マニアが時たま訪れるくらいでちょっとした真空地帯となっています。「最初にコーヒーを、カレーライスは大盛りでお願いします」「大盛りは一〇〇円高い六〇〇円だよ」。律儀者の店主のいつもの決まり文句に「はい」と素直に返事を返して熱いコーヒーをすすります。日中は晴れても10度には届かないと、今朝の天気予報で知ってはいたのですが、コーヒーカップを両手で包んで思わず暖をとるほどに陽の当たらないカウンターは寒さがひとしおです。「ハイ、おまたせ!」、カレーライスの登場です。船形の容器に山盛りのご飯とヒタヒタに入ったカレーの湯気が、もう既においしそうです。らっきょうと福神漬けは食べ放題、嬉しいですね、しかも高級品ですよ。スプーンですくったご飯にたっぷりカレーをのせて「ああ、この味!この味!」。芋も人参も玉ネギも肉も全てルーに溶け込んだ昔懐かしいカレーです。気付くとカレーがほとんどなくなって、ご飯が少し残ってしまいました。私の本領はここからなんです。ご飯を器のそこここにこびりついたカレーに、こすり付けるように舐めるようにして食べる。茶懐石の飯茶碗を洗うカレーバージョンが私の好みです。ドイツやフランスではパンで残りのソースをぬぐい取りますよね。それを見ていた店主が「カレー、少し入れてあげるよ」と親切に言ってくれましたが、「これが好きなんです」と答えると、にこりと「遠慮は無しだよ」と江戸っ子らしい優しい心遣い。

 昔の味を頑固に守っていつも変わらない味を提供してくれる店主の心意気と自然体のホスピタリティ。ここにマニュアルはありません。ハイ、〝ごちそうさん〟です。

オン・ザ・ハウス

 2日目の夜、NOBU・LANAIの受付で名前を告げると、スレンダーなロコの受付嬢が満面の笑みに両手を広げて「KOJIさん、ウェルカム!」と挨拶してくれるではありませんか。オーシャンフロントのテーブルに案内されるや、日本人シェフとメインランドから来たという料理長が揃って駈けつけてくれました。お勧めのロブスターグリルにオマール海老のサラダとNOBU・LANAIでしかないメニューをお任せでオーダーすると、「ノブさんからです」と、シャンパンが一本、オン・ザ・ハウスです。「ありがとうノブさん」。オーダーしたロバート・モンダヴィの2008年ヴィンテージと一緒に贅沢極まりないディナーに家内は孫娘と料理の写真を撮りまくりです。「菅田さんは納豆がお好きと聞いておりますので、ご用意しました」とコースの途中で納豆の細巻きが出てきたのには全員が拍手! 世界のどこに行っても、この納豆巻きは私達を癒してくれます。いやぁ、本当に嬉しかったです。豪華なデザートに「これは別腹ね」と家内と孫娘はひと通り写真に記録して完食です。NOBUの料理は世界のどこの店に行っても期待を裏切りません。昨年はニューヨーク、ラスベガス、マリブ、ビバリーヒルズ、そして東京とラナイ、ワイキキまで制覇しましたが、今年はロンドン、ミラノ、ミコノスに行けたらいいな、と今から夢の予定を組んでいます。

 あっ! そうそう、ラナイ島3日目の夕食は、ホテルのドアマンの情報でラナイ・シティに一軒だけあるテイク・アウトの出来るローカルレストランの名物料理「コリアン・チキン」を食べに行きました。そして、もう一品、気になるポークカツレツもオーダー。これが日本スタイルのトンカツなのには3人でビックリしました。「こんなところで日本のトンカツ」。量も吃驚の3枚重ねに、テイクアウトでは定番のライスとマカロニがスクープで盛られてのワンディッシュです。ライスには醤油をかけ、マカロニにはタバスコ、トンカツにはトンカツソース。これらが普通に店置きされているから不思議です。「コリアン・チキン」の正体は、鶏の手羽元のから揚げに餡かけ甘酢がかかってライスとマカロニも同じく、ワンディッシュです。何でコリアンなのか分かりませんが中々おいしい、しかも量が半端ではありませんでした。最終日にもう一度NOBU・LANAIのディナーを楽しんで、いよいよホノルルです。

 NOBU・ワイキキは相変わらずの盛況でした。そして、何人もの友人とここで偶然会えたのも人気店ならではのサプライズですね。

弊社社長 菅田耕司のコラム


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