普段は引き出す事のない物入れの奥の棚を整理していると、懐かしい“知恵の輪”が出てきました。繋がっている2つの金具を外すパズルです。どれどれ、とばかりにカチャカチャと回してみても、引っ張ってみても外れません。試行錯誤を5分間ほど繰り返すも、すぐ飽きてしまって棚の奥にふたたび放り込んでしまいました。おそらく貰った時もこうして仕舞い込んだのでしょう。何はともあれ、むずかしい! そして何と根気の無い事か。知恵の輪って知恵を使ってパズルを解く訳ですよね。「知恵」。知恵ってどういう事なんでしょう? 何だか妙な方向に頭の回転が迷走します。パソコンを開いて辞書でその意味を改めて調べてみました。“物事の道理を判断して処理してゆく心の動き。物事の筋道を立て、計画し、正しく処理してゆく能力”「なーるほど、私には知恵が足りないという事なのか!」と妙に納得してしまいました。
他にもこんな“知恵”をよく使いますね。【浅知恵】(浅はかな知恵)、【猿知恵】(悪い事によく働く、いわゆる悪知恵)、【入れ知恵】(他人に知恵をつける。多くは悪い事にいう)。友人のふりをして、けしかける人、いますよね。【知恵者】(知識を応用できる者。知恵を働かせる事ができる者)。毎週日曜日の午後8時から放映されているNHK大河ドラマ「黒田官兵衛」。こういう人を“知恵者”と言うのでしょう。いっぽうニュース番組のコメンテーターなど、知識をたくさん知っているだけの人は“知識人”と呼ぶそうで、その知識を応用できなくては、ただの“物知り”なだけです。
旧約聖書の箴言十六章十六節に
「知恵を得る事は黄金を得るよりはるかに優る
悟りを得る事は銀を得るより望ましい」
とあります。敬虔なクリスチャンのシェイクスピアは「愚かな知恵者になるよりも利口な馬鹿者になれ」と道化師に語らせました。なんだか深いですね。凡人の私は“知恵の輪”から根気よく始めるのが肝要かも知れません。
七十二候のひとつに「桜始開」があります。さくらはじめてひらく“春分”の頃は三寒四温を繰り返しながら春の訪れを告げる、さまざまな自然の営みが我が家周辺にもゆっくりと始動している予感が見受けられます。
ぷっくりとしたピンクのつぼみをたわわにつけた桜の小枝がかすかに揺れました。今朝の訪問客はメジロです。庭石のまわりにはワラビが揃って、くるくるとしたかわいい芽を出しました。
春の山菜もこれからが本番ですね。私の好物のコシアブラは関東のソメイヨシノが満開になる頃あたりから店先に2週間ほど並ぶレアな山菜で、天ぷらにすると嫌みのない苦味と上品な甘さが舌から鼻に抜けて、サクサクとした食感には、ぬるめの燗酒がよく合います。
ミネラルたっぷりの大地にかぶった雪融け水が山菜たちを目覚めさせるのですが、今年は日本各地で限度を超えた豪雪による被害が農家を苦しめました。自然界では「ちょうどいい」は通用しません。特にハウス栽培農家は軒並み壊滅とかで、キュウリやイチゴ、ブドウ園などを営む農家の方々の悲痛な叫びがニュース番組を通して聞こえてきます。被害は農家と農産物を扱う全ての関連企業にもその影響が飛び火し、大打撃となる経済的損失は予想をはるかに上回り生活そのものが困窮している惨状です。こういうときにこそ政府は生活の保護と経済支援をすみやかにすべきではないでしょうか。国の根幹をなす農業をTPPでは粘り強い交渉で守っていますが、自給率の向上、そして豊かな食生活を自立するためにも迅速なる手厚い保護政策が実行される事を望みます。
食材を育み、そして手塩にかけて育てた実りの味を知っている人達がつくる農産物は“おいしい”に決まっています。春の恵みを支えてくれる生産者の皆様の努力に感謝です。私達も共に失望することなく忍耐強く努力を続ければ、やがて春が訪れて来ます。いや、春をもたらしてもらっているのかもしれません。
ネット通販は楽しいものですね。まるで玉手箱を開けたように欲しいものがたくさん出てくる!ただし、ネット取引には最善の注意を払って利用しないとトラブルに巻き込まれる事も多々あるようなので、初心者の私としましては信頼度の髙い〝アマゾン〟だけを利用しております。なかでもこれは〝すごいね〟と思った3品を紹介しましょう。
イベリコ豚48か月熟成ペジョータの原木(うしろ足1本の生ハム)は、ホームパーティーでは主役となります。「レストランみたい」「初めて見たわー」「超高いでしょう!」5年程前にネット通販で購入したのが、このイベリコ1本でした。今では結構流通しているらしく、今年の1月に購入したイベリコにはお客も「あっ、また買ったんだ」「日持ち大丈夫なの?」くらいの反応で、私がスライスしてテーブルに出してもあまり手が伸びません。世の中贅沢になったものです。
「ブラディ・メリー」。ウオッカをトマトジュースで割った有名なカクテルです。家内はこれが大好きです。航空会社のラウンジに行くと「パパが作るのが一番おいしいわ!」なんておだてられていつも作らされていました。昨年末に、メゾンカイザー本店の隣にオープンした〝グリル&バー〟で木村周一郎オーナーから勧められて飲んだブラディ・メリーは驚くほどのおいしさに度肝を抜かれる思いでした。それはベースのトマトジュースが違うんです。ハマグリのブロス、セロリ、オニオンパウダーがカクテルされたトマトジュース〝クラマト〟、こんな缶詰があったんですね!ウオッカにクラマトを入れ、リーベン・ウスターソースとタバスコを数滴垂らして口に含むと驚きの味が広がります。これは我が家の究極のパーティーメニューの一品としてアマゾンで6ダース買い求めました。
冷蔵庫で固まったバターをパンに塗るときは大変ですね。そんな悩みを解決する優れものがネット通販に登場しました。その名も「イージィー・バター」。1ポンドのバターを器に入れクルクル回すとふわっとした糸状のバターが無数に現れる。そうそう、昔子供のおもちゃで〝粘土の床屋さん〟ってありましたね、棒状の粘土を押し上げると人形の頭に髪の毛のように出てくるアレです。イージィー・バターが宅配された日はたまたま我が家の冷凍庫には夕食用のバゲットのストックがなかったので、急ぎ近所のスーパーのいなげやに行って買い求めた山崎製パンの「パリジャン」、パンは袋の中でフニャフニャなんですけど、霧吹きしてオーブンで焼くとパリパリ皮のパリジャンにヘンシーンして、有名店のバゲットと比べても遜色ない超お得なパン好きにはたまらない優れものです。もちろんその夜は、2本のパリジャンがきれいになくなったのは申し上げるまでもございません。
家内は〝女子会〟でおでかけです。私は頸椎部のMRI検査を明朝に控えて飲食は20時で終了、となれば愛犬と共に寝て待つしかない、という訳で室内灯を消したのが22時頃。その直後に玄関扉が開く音に反応した愛犬が頭をもたげます。ベッドに入ったまま灯りをつけると「お早いお休みで」と嫌味なのか身体を気遣ってくれたのか「今寝たところだよ」が嘘に聞こえるのは「立場の差」なのかもしれません。そうなんです、我が家の決まりは全亭協の定める〝非勝三原則〟が徹底されておりまして、勝たない・勝てない・勝とうとしない。の賢い教えが体に染みついているからなのかもしれません。そんな家内が「ラティママからの福岡土産よ」とご機嫌な様子で小さなレジ袋をサイドテーブルに置きました。ちなみに〝ラティ〟は犬の名前で愛犬家仲間はそう呼んでいるのです。ですから、うちの場合は〝リュリュママ〟となります。
まっ、それから少しいろいろありまして、朝がやってまいりました。朝食抜きでMRI検査に出かける時に、レジ袋に入ったお土産を思い出して取り出すと、なんという事でしょう。『ヤキリンゴ』と、レトロな書体で書かれた袋の中には2つのパンケーキの小袋が入っており、リョーユー坊やが描かれているではないですか。もともとは5個入りなのですが2つだけラティママがくれたその訳は! それは帰宅後に2人で試食しながら考える事にしましょう。
その日の午後、メディカルセンターで検査を終えて帰宅した私は家内と一緒に「ヤキリンゴ」を前にして考えます。「とりあえず食べてみようか」「クリームパンケーキなの?」「あれっ、なんだか懐かしい味だね。今どきのドラ焼きと違ってパンケーキも素朴な焼き方で、レトロな味のクリームも普通に旨いね」「で、どこがヤキリンゴなの?」「わからないね」「実はね、さっきラティママに電話して訊いたのよ、ちょっと恥ずかしかったけれど、どうして5個入りなのに2つだけなの? って」「そしたら?」「ラティママは福岡出身なので、昔から大好きなリョーユーパンの〝ヤキリンゴ〟を帰福したらいつも買って食べるのが唯一の楽しみだそうよ。なんでも、今回もスーパーを4~5軒巡ってやっと見つけた1袋らしくて、飛行機の中で3つ食べちゃったんだって」「なるほど、おすそわけね」「〝普通に旨い〟をいじらずに作り続けるからロングセラーになるのね。レトロ感たっぷりなのが、またいいわ」「際立つとアキがくる。だから〝普通に旨い〟がいいんだよね」
アラモアナ・ショッピングセンターのタワービル前より山側へ一直線に走るケアモク通り。ショッピングセンターやワイキキのような喧騒はありませんが、この通りには私の好きなレストランがたくさんあるのです。と、その前に、毎年12月の私の誕生日にハワイ旅行をプレゼントしてくれる家内に感謝。10年以上続いた旅行ですが、今年からは「中止」としました。それは愛犬リュリュが重度の白内障にかかり、盲目の日々を過ごすことになったから。その日は突然に襲ってきたのです。まだ9歳なのに。犬の寿命は純血種であればあるほど短く、口にしたくはないリュリュの予想は11歳。だから2人して「これからは一日でも長くそばにいないとね」と涙をこらえて決議しました。
ハワイに行くと、リュリュの大好物の乾燥した鹿のツノと音の出る玩具を必ず買い求めるのが常でした。「いい子にしてるかな」。留守を頼んでいる家内の妹に電話してリュリュの耳に携帯電話をあててもらい、「リュリュ! ママですよ!」なんて、お決まりの親バカ夫婦です。
ケアモクを少し行くとウォルマートの右側に「ソラボール韓国料理店」があります。ここは24時間営業で、私はゴルフに行く日の早朝に友人とスンドゥブチゲ定食を必ず食べるのが習慣になってしまいました。朝一番の辛い刺激はドライバーショットに“力”をくれます。が、技までは与えてくれません。サウスキング通りの角にある「ロブスター・キング」は香港料理店なのですが、店名の通り活ロブスターが売りでロコにも人気の超繁盛店です。2年前には16ポンド(7㎏超)の特大ロブスターにありつけました。
その先にあるベトナム料理の名店「マイラン」も、各航空会社CAの“隠れ人気レストラン”とかTVや雑誌の特集などで紹介されて以来、予約の取りづらい店になってかれこれ30年にもなる老舗レストランです。一押しの料理はブツ切りしたワタリガニのカレーで、フランスパンで食べる、さすがは植民地時代の面影を残す絶品のコラボ料理です。内子も味噌も、そして身もしっかりと入ったこのカニは手づかみでチュウチュウすすって、カレーだらけの手でフランスパンをココナツミルク味のカレーにたっぷり付けて食べる幸せ。マイランのフランスパンはとてもおいしいんです。リュリュにも一切れあげたいな。
1年に一度と言うけれど、留守中のリュリュはとっても寂しかったのかもしれません。考えれば考えるほどあまりにも辛いから、食べものの話をすれば少しは気が紛れるかなと思ったのですが。
「中止じゃなくて、リュリュと一緒にハワイ行く?」「住むの?」