久し振りに家内とふたりして近所のスーパーへ買い物に出かけました。買い物リストは、納豆、豆腐、油揚げ、長ネギなどの朝食用食材とトウモロコシ、そして愛犬の好物、低脂肪牛乳です。先にレジに並んでいる家内のバスケットの中に「3色団子」1パックをサッと入れると、「好きねえ」と一言。私の場合、目についたら買ってしまう菓子のナンバーワンがこれなんです。
空模様が怪しい先週の土曜日の夕方、愛犬の散歩を終えて、録りだめしておいたTV番組を観ながらの夕食は、デパ地下のセールでまとめ買いして冷凍保存しておいた骨付きのハムと、レタスを共にたっぷり挟んでのバゲットサンドです。具はもちろん、デジョンマスタードとマヨネーズに、ディルタイプのピクルス。どれもバゲットサンドの基本中の基本で外せません。そして主役のバゲットは、広尾のナショナル麻布スーパーマーケットで売っている東山堂ベーカリーのバゲットです。買い置きしておいたバゲットを冷凍庫から出して、2時間かけて自然解凍したら霧吹きをして200℃のオーブンで7~8分、リベイクされているパンのパリパリ感は、時折オーブンを開けて表面を触りながら手で確かめます。ルヴァンを入れてもちもちした食感のバゲットや、フランス産バゲット専用粉で焼成したものも大好きですが、中は食パンのようにフワフワで、皮はパリッとしたバゲットもたまにはいいものです。
「なにか他にないかな? 酒のあてになるものは……」
と、思案しながら冷蔵庫の野菜室を開けてみると、困ったものです。先ほどスーパーで買ったトウモロコシを忘れていました。今日一番の楽しみだったのに! そういえば、電子レンジで温めて食べようとしていた夕食のおかずを朝発見することってありますよね。そんな感じで忘れられていたトウモロコシをガスコンロに網を置いての焼きもろこしは、つきっきりでないといけません。「パン! パン!」とはじける音が鳴っても我慢です。焦げ目がついてきたら回しながらじっくり焼いて、仕上げは当然のたっぷりかけ醤油。ジュー! と煙が立って換気扇に吸い込まれて外へ流れれば、通りすがりの人は湘南の海の家の焼きもろこしの香ばしいニオイを思い出すことでしょう。1本98円でこの旨さが味わえるのは幸せです。生産者の皆様、本当にありがとうございます。
さあ、梅雨も明けていよいよ 夏本番です!
“おいしい夏”を楽しみましょう。
7月4日は“インディペンデント・ディ”、アメリカ合衆国の独立記念日です。私たち夫婦が所属するクラブでは翌日の5日(土)に盛り沢山のイベントが朝から行われましたが、芝公園周辺を2周する約6キロのミニマラソンに揃って参加しました。
クラブのロッカールームで身支度を整えて表玄関へ進むと、キャロライン・ケネディ大使が来られました。「おはようございます」。いつもと変わらぬ上品な笑顔で互いに挨拶を交わしました。
「なんか今日はいい事がありそうだね」
「小雨も上がった事だし、さあ走るわよー」
家内は、6キロを40分で完走しました。私はシアトル出身のマダムとおしゃべりしながら早歩きをしたのですが、途中で2周目を走る家内にあっさり抜かれて1周3キロのタイムは50分。普段のランニングマシーンではもう少し速いのですが、一般道は道路のアップダウンがキツくてそのまま1周だけでゴールとしました。のんびりペースに付き合ってくれたアイリーン、ありがとう。
シャワーを浴びて、昼からはBBQタイムです。アメリカ海兵隊のブラスバンドで会場は盛り上がり、両手を使わないパイ・イーティングでは顔中をクリームだらけにして必死で食べまくる姿に全員が大笑いです。
そうだ! 今日はこれから、虎ノ門ヒルズへ行こう!
楽しいパーティー会場を後にして、私たちは今話題のランドマーク見学と洒落てみました。「メゾン・カイザーもオープンした事だし、一度は行かないとね」。
ところがです。
森ビルの最新施設なのに地下3階の一般有料駐車場は駐車するのが難しい、とても狭いスペースなのです。その上、満車状態でした。土曜日だというのに(いや土曜日だからなのか)、すべてのレストランの前には長蛇の列。中でも、熟成ステーキを提供するレストランの前に並ぶおよそ100人以上の行列には驚かされました。メゾン・カイザーは、2階のメインビルよりテラスに出たところにありました。ここも相変わらず賑やかな行列です。可愛い制服を身にまとって、キビキビとした接客をする従業員たちの笑顔が爽やかでしたが、パンを買うのも一苦労なので今日は行列見学だけで撤収することに相成りました。
7月14日はフランス大使公邸で、毎年恒例の“パリ祭”が開催されますが、メゾン・カイザーを始め、ポンパドウルが経営するヴァン・ドゥ・リュドやビゴの店などが並び、パンを提供するブースを出します。マセ駐日大使を始め800名超のゲストを迎えて、今回は各ベーカリーがどんな趣向を凝らしておもてなしをしてくれるのか楽しみです。
私には“師”と仰ぐほどの友人がいます。
ズバッと的確なアドバイスは親しき仲なればこそでしょう。
何がしたいの?
誰かに相談したの?
それは可能なことなの?
頭に焼き付いている彼の言葉は、衰えた身体に喝を入れるべく真面目に通っているジムのランニングマシーンに乗ると、次から次へと思い出され質問を投げかけてくるのです。ですから私は1㎞を11分間の速度に調節したマシーンの上で走りながら考えるのですが、出てくるのは汗ばかりで答えが見つかりません。実際に仕事でもプライベートでもしたい夢がたくさんありすぎて、60分ほどでマシーンを降りたら友人のアドバイスもすっかり忘れてしまうありさまで、情けない限りなのです。でも彼のおかげで少しだけわかってきた答えがあります。それは今の仕事を維持する事、情熱と責任を持って生きるという事を。(これが一番難しい!)
先週、in honor of というとてつもなく恐れ多いご紹介で、招待いただいたモロッコ王国の駐日大使公邸での正式晩餐会で私はまたやらかしてしまいました。翌日、一緒に会食した“師”から電話がかかってきました。
師 「K.Yな性格から直そうか」
私 「あっ!」
二日酔いの重い頭に思い当たることが、次から次へと思い出されます。
「最初から最後までひとりでしゃべっていたよ」
アルコールが入って気分が良くなると独り舞台を演じてしまうのが私の悪癖で、もうひとつは気がのらないとすぐ帰宅したくなる身勝手な癖。そういえば大使ご夫妻と12人のゲストが着席したテーブルで、私は隣の大使と目の前のゲストのふたりしか目に入っていなかったのです。ディナーが終わるまで端に着席していた家内とも一言も会話が無かった!(またやってしまったな!)
その日のランニングマシーンは、後悔の念がありすぎて20分で終了してしまいました。ランニングマシーンに乗るときは、楽しいことを考えたほうがナチュラルハイになるみたいです。
“倦まず弛まず努力する”
そう、自分を向上させる事を怠らない。反省しきりの毎日です。
今から四半世紀以上前と言うと少し大げさですが、中央線高円寺駅北口そばの雑居店舗に2坪弱の小さな台湾料理店がありました。台湾人の洪さんが1人で切り盛りする料理は“毎日食べても飽きがこない”薬膳を取り入れた台湾家庭料理の数々。好きだったメニューを思い出せば、ガツにんにく炒め、汁ビーフンと炒めビーフン、秘伝のタレで煮込んだ玉子や豚三枚肉、鶏手羽、豚足……すべて舌が記憶しています。ですから今でも時折、洪さんから伝授されたお手製台湾料理を我が家で客人にふるまうと大変に喜ばれます。
洪さんは当時70歳を超えていたでしょうか、店が引けてから高円寺界隈を2人してよく飲み歩いたものです。洪さんは日本の醤油中毒? というか、何にでもたっぷりかけるのに驚かされました。そしてキリンラガーの大瓶を4~5本と流し込む飲みっぷりも少し心配でしたが、「私のスタイルだから」と潔い一言。いつしか私も醤油中毒にかかっていたようです。有名店の鍋前のカウンターでいただく天ぷらも、天つゆではなく持参のマイボトル醤油という按配です。
洪さんの料理で1つだけ、どうしても未だに作れないものが絶品の「香腸詰」。思い出しただけでも「アー! 食べたい!」と我慢できません。これを求めて東京中を探してみたのですが、結果はあの甘い腸詰にしか行き当たりませんでした。
「この香腸詰、いい香りですね」
洪さんはニコニコして
「ありがとう、そうなんだよ。だから香腸詰なんだよ」
この会話が頭に焼き付いています。
「そうだ、中国の香料をいろいろと調べてみよう」
という訳で先週、豚肉を荒みじんに叩いて、塩コショウ、紹興酒に加えて五香粉を混ぜて、天然の塩抜きした豚腸に詰めて5時間ほど自然乾燥させてみたところ、洪さんの店の壁に打った釘に掛けてぶら下がっていた香腸詰に限りなく近い香りと“形”になりました。それでは試食してみましょう。爪楊枝で10カ所ほど刺してパンクしないように穴を開け160℃の低温でじっくり揚げます。揚がったら太目の斜め切りにして白髪ネギと豆板醤をのせて食べてみると「ウン、これこれ、この味と香りは近いものがあるよ」。家内にも試食してもらうと「あー、洪さんの香腸詰だわー、でも30点ね」と手厳しいのですが、お互いに四半世紀の時を遡ります。それに合わせるのは真っ赤なラベルの5年物の台湾の紹興酒600 ml入り。いつも洪さんの店で飲んでいました。酒屋で1本600円くらいで今でも売っています。
香腸詰の味はまだまだ洪さんには及びませんが、成功した暁には紹興酒と共に読者プレゼントする予定です。お楽しみに!