ほどほど
「オーパスワン」。
ワイン好きの方なら誰しもが認める米国カリフォルニア州ナパバレーの特級赤ワインですが、同じ畑で収穫したブドウでつくる“オーバーチュア”、いわゆるオーパスワンのセカンドといわれるワインが存在することはワイン通はともかくとして、メジャーな銘柄ではないため世間ではあまり知られていません。
私は「オーパスワン」のワイナリーには行ったことがないので、どちらもボトルの正価格を把握していませんが、毎年行きつけのハワイのワインセラーで買い求める価格は、昨年末の時点で
オーパスワン 一本220ドル
オーバーチュア 一本120ドル
といったところです。それを六本入りの木箱で各一箱ずつ買い求めてくるのですが、帰国後にネット通販を検索すると…
オーパスワン 一本5万円前後
オーバーチュア 一本2万5千円前後
実に約二倍以上! なんともビックリな価格設定に驚かされます。
そんなわけでありますから、一年間かけて
“よし、今日はハレの日だな”
と、コルクを抜くのです。
しかし、必ず一本はワインセラーに残して保管しています。
というのも、成人した孫のお祝いに一本ずつともに飲むのを楽しみにしているからです。
オーパスワンとは音楽用語で「作品番号一番」の意味で、
「一本のワインは交響曲、一杯のグラスはメロディのようである」
(バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵)
という有名な一節が思い出されます。そうなんです、バラのような香りが鼻孔をくすぐり、口に含めばふくよかな口当たり、交感神経を刺激して幸せのアドレナリンを湧き出してくれる味に、ゆっくりと喉を通せば、誰しもが笑顔とともに「ウンウン」と頷きながらワインを愛おしい人を見つめるかのように眺めてテーブル上でグラスを回します。
ドヴォルザークの新世界やベートーベンの第九のような、時に優しく時に荒々しく、そして優雅に奏でられるクラシック音楽と至高のワインのマリアージュは至福の時を与えてくれます。
誰かが言っていました。
「生き方や習慣が人生を変える大事な要素である」と。
本物を知りブラッシュアップさせて自己を作り上げるには、このような経験を人生の中で時には必要とするのでしょうか。ほんの少し、本当にほんの少しだけの良き記憶と体験が、生き方を変えてゆくのでしょうね。でも、美食が習慣となると身体を壊すことは間違いありません。
何事も、“ほどほど” がちょうどいい。
そうでしょう?
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