チョイ悪オヤジ
8月に医者の許可を得て久々となるハワイへ行った時のこと。
成田の免税店で、いつもは自分のお気に入りの化粧品を真っ先に買い物に出かける家内が何を思ったか、エルメスのショップに行こうと言います。私達には縁のないセレブ御用達ショップの店内には驚くほどの値が付けられた財布やバッグ、スカーフが華々しく展示されています。ほどなくして家内が、
「これこれ、すみません、サンプルよろしいですか?」
と店員に声を掛けると、何やら細い紙切れに液体を付けて渡してくれました。
「どう? 嗅いでみて。いい香りでしょう?」
「ウン。でも、どうして?」
「以前、ジブチ共和国の大使のお宅に伺った時、大使がつけていたコロンよ。私、この香り大好き!」
という訳で1万円近くする男性用コロンを1本プレゼントしてもらいました。こんな事、今までに一度もありませんでしたから、驚きであります。
ホノルル空港へ到着してレンタカーで向かう先は、お決まりのレインボードライブインです。照り焼きビーフとチキンカツ、マヒマヒのフライとライス、マカロニ、スライスキャベツが盛られたワンプレートに、とてつもなく大きいラージサイズのダイエットコーラをテイクアウトしてカピオラニパークの大きなバニヤンツリーの下にあるピクニックテーブルで、赤いトサカが可愛いレッドカージナルやスズメ、ハトに囲まれて久し振りの楽しいピクニックランチです。小鳥たちとランチを楽しんだらコオリナにあるフォーシーズンズホテルに向けて出発! ホテルに到着する前に家内が“ミンティア”をさりげなくくれました。何と気の利く家内でしょう。
ハワイでの楽しい10日間があっという間に過ぎて、日常生活の待つ日本へ帰国しました。と、ある日のある時、パッと頭にひらめいた事がありました。
「確かミンティアは頭をスッキリさせてくれるが、口臭を防ぐ事でも知られているな。待てよ、あのコロン、もしや加齢臭を隠すための“道具”だったのかもしれないな。いやいや、そんな事はない、毎日ジムに通ってスチームバスにもジャグジーにも入っているから心配はないハズだ」
胃癌で胃の3分の2を取ってポッコリお腹もなくなり、18キロも体重が減ったせいか、顔も体もひと回り小さくなったから
「あなたは生まれ変わったら少しお洒落したらどう? チョイ悪オヤジも悪くないわよ」
と家内におだてられてその気になって、外出時にはコロンを少し付けるようにしていました。
先週、パレスホテルでアンゴラ共和国の独立41周年記念および日本・アンゴラ友好40周年記念のレセプションが開催された時、久し振りにジブチ共和国のアリ駐日特命全権大使とお会いしました。お互いに駆け寄り握手とハグをして旧交をあたためると、しばし顔を見つめ合って大笑いです。
「ナイス・フレグランス!」
再びハグをして背中をポンポンと叩き合いました。2人のチョイ悪オヤジがセレブリティなマダム達とシャンパングラスを鳴らしてパーティーを大いに満喫する様を、家内は嬉しそうに見ているのでした。
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