夜の女王のアリア
「気づいてはいけない」と思うのです。
“自分は才能がある” “格好いい” ……それが自信になればともかく、自惚れではいけません。気づきもせず、脇目も振らず一生懸命好きなことに没頭している姿勢は美しいでしょう?
己を知るということは、人生の中で最も大事な使命だと思う一方で、
“褒められると謙遜する自分は、なんて謙虚なんだろう”
なんて、むしろ自画自賛しているときってありますよね。
「もっと言って、もっと褒めて!」
と喉まで出かかっている。そんな思いを込めてお洒落をする人、いますよね。格好いい車に乗ったり、バッグや時計など高級ブランドの力を借りてでも人目を惹きたい。世の中、そういう人もたくさんいるからこそ、経済は成り立っているという側面もまた確かにあります。
絵画や音楽、陶芸など、美術・芸術に秀でている人は自分をどう思っているのでしょうか? あるいは芸人さんやニュースキャスター、政治家、丸の内女子、エリートサラリーマンetc 。それぞれの分野において自分の才能を確信しつつも、ひけらかさない謙虚さと一生懸命さには自然と美しさが伴います。
翻って、ワイドショーのコメンテーターはどうでしょうか? まともな方もおられますが、大概は他人(視聴者)に自分と同じ主観を持てと強要します。自分と他人の人格の違いが曖昧で区別できない、情けない人種です。ですから、彼らは反面教師なんだという意識でワイドショーを観ていると楽しいですよ。
モーツァルト作曲の歌劇、「魔笛」より「夜の女王のアリア」を熱唱する映画『マダム・フローレンス』。音楽を純粋に愛するマダムの半生を描いたノンフィクションムービーを、昨年末に代官山のブティック、ジュン・アシダの招待試写会で家内と鑑賞して来ました。
“絶世の音痴”であるマダムが人々を魅了し、ラストでは満員のカーネギーホールで鳴り止まぬスタンディングオベーションを浴び続けます。信じられませんが、1944年にあった実際の出来事なのです。彼女自身は気づいていませんが、間違いなくひどい音痴。それでも歌手として喝采を浴びることを夢見るマダム、そしてあらゆる手段を駆使して絶対不可能なはずの妻の夢を実現させてしまう実業家の夫。人々に希望を、勇気を、感動を与えてくれるストーリーに涙腺が緩みっぱなしでした。
才能って、他人が一概にあり・なしと決めつけるものではないと思います。人を思う心と、一生懸命の努力を継続する。これさえあれば素晴らしい人生が過ごせることでしょう。ネットで実際の歌声が聞けますので、ぜひ聴いてみてください。 そして、一流歌手の歌も聞いてみてください。
“感動”それとも“ショック”……あなたはどちら?
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■