言わずもがな
1月15日付の日経新聞朝刊に掲載された、ひときわ目を惹くカラー全段広告に興味をそそられました。ヘッドラインはこうです。
「憧れのハワイに出店しませんか?」
ホノルルの有名なショッピングモール「アラモアナショッピングセンター」内に確か5~6年前にオープンした日本食専門のフードコートのテナント募集です。
白木屋が運営する「シロキヤ・ジャパン・ビレッジ・ウォーク」にはハワイに行った際に必ず一度は立ち寄る事にしています。それは「おいしいから食べに行く」のではなく、オープン当初からなにか引っかかる思いがあったからなのです。
さしずめ視察のような目線でグルリと一周りして何軒かの料理を試食するのですが、毎回のように首を振ってしまいます。無形文化遺産に登録された日本食が、果たして正しく提供されているのか? そんな危機感ゆえの少々残念な習慣になってしまいました。
そして、悪い予感どおり毎年訪れるたびに客足が少しずつ遠のいている気がしてなりません。ジャパンビレッジ全体が活気のない淋しい風景を作っているかのように思われます。今回の広告出稿は改善されないテナントの質の低下と空き店舗の多さを挽回する苦肉の策といった所でしょうか。「憧れのハワイ」というフレーズを全面に押し出すばかりで詳細には触れず、具体的な情報は東京・大阪の一流ホテルにて開催する出店説明会の告知のみ。この広告をきっかけに、単なるハワイ定住の近道と早合点したリタイア世代や素人が安易に飛びつく様が想像できますが、投資や開店に走る前に、まずはご自身で現状を視察するのが肝要でしょう。
「白木屋」は以前、ローカルの日系人や日本人観光客にとってアラモアナの“顔”でした。2階の一等地に位置する瓦屋根を施した入口をくぐれば、「サンジェルマン」の焼き立てのパンの香りに食欲をそそられ、エスカレーターで上階を目指すと、そこには日本食のパラダイスが広がっていました。日本食のありとあらゆるメニューが揃っていて、奥には弁当や惣菜コーナーが立ち並び、またセルフのイートインコーナーも含め、連日満員の盛況ぶりでした。
そうそう、近所のドン・キホーテがまだ「ホリデーマート」だった時代の話です。「姉さん、元気ですか? 僕もここハワイで頑張って元気してます!」と若かりし日の高嶋政伸さん主演の人気TVドラマ「ホテル」が放映されていた頃、劇中で登場するラーメン店がホリデーマートの1階外の店舗で営業していた時代ですね。ご存知の人はとても懐かしいでしょう? 当時ハワイに住んでいた私は、こちらの「どさん子ラーメン」の味噌ラーメンをよく食べていました。本当においしかった! しかし今では豚骨ラーメン店に変わり、そもそも東京でも「どさん子ラーメン」はほとんど姿を消してしまい、あの超大盛りのモヤシと挽肉たっぷりの当時の味噌ラーメンは幻となってしまったのが残念でなりません。
時代が変わればメニューも変わる。全国を席巻する勢いだった札幌ラーメンが消えつつある(今では北海道を訪れる外国人観光客に「旭川ラーメン」が大人気だそうです)ラーメン大国・日本の現状を鑑みれば「言わずもがな」でありましょう。
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