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コラム 三寒四温

弊社の週刊紙「速報・製パン情報」から、好評の三寒四温をご紹介。
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アンビリバボー

 痛い。
 つらい。
 されど愚痴は言うまい。
 素振りも見せまい。

と、強がっても生身の体は正直です。ついつい、口に出してしまう。この意気地なしめ!

下手なのに、大好きだったゴルフ。「ゴルフができなくなったら、人生辞めるね」。なんて豪語するほど入れ込んでいたのに、クラブが握れない、振れない、コースを歩く事すらできないという三重苦に直面する事になるとは。それでも年に一度、程ヶ谷カントリークラブで開催していた弊社主催の「パン業界親善ゴルフコンペ」では50名近い業界人の参加者を迎えて先頭に立ち、はしゃぎ楽しんでいたのですが、3年前に中止して以来、再開は叶わずです。

4月の第三水曜日がお決まりの日程で、この時期は参加者の皆様へ開催通知を出していたなあ、今年の組み合わせはどうしよう、優勝賞品や各賞、そして参加者へのお土産は何にしようかな、なんて毎日考えるのが楽しみだったのに。昨年末に古希を迎え、近々いつか再開するぞと心に決めていたのに……。大事にしていたゴルフ道具一式は、最近始めたという甥っ子に全てプレゼントしてしまいました。これがなかなか、できなかったんです。心の中には幾許かの未練が残っていたのですが、いざ手放すとなぜか晴々とした気分でもあります。これで私のゴルフ人生は終わりました。淋しい。実に淋しい。

「頚椎損傷による手術は、首から下の全てが麻痺する可能性が20%あります」という医者の説明を受けても、手足の痺れが治ればという強い思いから首の骨を10センチ削るという大手術を決断しました。しかしその甲斐もなく3年経った現在では手足の指の痺れは手術前以上に悪化する始末。その1年後に偶然発見された胃癌では、術後10日間で退院のはずが、感染症および「産生胃癌」という10万件に1件あるかないかという症例に見舞われました。10日間のICUを経て2ヵ月以上の入院という情けなさ。術後、1年半におよぶATCという抗癌剤治療を3週間に1度、有明のがん研究所に通い続けました。昨年9月には脊椎狭窄症で3年間で4度目となる全身麻酔での手術も成功する事なく、医者から薦められた2度目の手術は拒否する事にしました。

しかし、体の不自由さに負けてばかりはいられません。手術後は100mも歩けなくなっていた私はルートブロックという痛み止めの注射を打ち、スポーツジムのウォーキングマシンに恐るおそる乗って、ゆっくりと歩いてみました。ルートブロックを打つ前にトライした際には1分と続きませんでしたが、今回は時速3マイルの速度で15分も歩く事ができました。

柔軟体操を軽めに仕上げてのジャグジーは至福のひととき。全身に叩きつけるバブルが幸福感を刺激してくれます。ゴルフは無理でも、体を動かせるエクササイズが日々の充実感を満たしてくれます。諦めずに一歩一歩、そして10年後の創業80周年を迎えられたら、天国の父も喜んでくれる事でしょう。「アンビリバボー!」ってね。


相対的判断

人の意識と味覚の進化は21世紀に入って以降
とてつもない早さで新たなレベルに突入しつつある

というのが私の推論です。いかに選択の幅が増えたか、という話でもあります。

例えば、私はA店がパンはおいしいと感じ、家内はB店のパンがおいしいといいます。これはふたりの味覚の違いをあらわす“相対的判断”ですね。どちらも正しい意見であり、これを広い視野でとらえると、嗜好の差は「万人に存在」すると理解できるのではないでしょうか。もちろん、常識の範囲内のレベルです。

人それぞれ、好き嫌いは千差万別です。人と人、そしてその友人と友人とでは好みが違うといった具合に、嗜好の違いは無限といえるでしょう。「一つから無数へ、無限の嗜好の違い」。その多様性が進化の証でもある、という訳です。

弊社の月刊紙「日本パン・菓子新聞」にて10年以上にわたり続く企画、世界各国の駐日大使夫人による「大使夫人のおもてなし」コーナーでは、それぞれのお国柄を反映した食卓における、主食と料理の数々が紹介されています。

例えばケニア共和国の「ウガリ」。これはトウモロコシを粉にして水で溶き適度な硬さに練りまとめて蒸して、その完成品を手でちぎりながら他のおかずと一緒に手にまとめて食べます。「手」で食べる文化は我が日本をはじめ世界各国に多数存在します。インドやサモア、パプアニューギニアなどなど。一度手でまとめた料理を口にすると、新たに食感も雰囲気も変わります。普段なら箸やフォークで食すであろう料理に直接触れることで生じる違和感、それこそが“新しいことにトライしている”というチャレンジ精神であり、最近私が好きな言葉“ウィアード”(変人であれ)の精神に通じるかのような高揚感を覚えるのはなぜでしょうか。人は人、自分は自分。そして、パン屋はパン屋なのです。

それぞれに特徴があり、長所もあれば短所もある。選り好みは無限大でしょう。ここで私は思うのであります。顔の見えない「顧客ファースト」や、膨大な情報量で押し寄せる海外トレンド等に拘泥することはありません。要は自分好みのパン屋さんへ好きなパンを買いに行けばいいことなんです。自身の価値観を信じた上での「相対的判断」があれば、いたずらに右往左往することもないでしょう。

ここで私は提案したい。今までの概念を捨て去り、自由な発想の元にパン屋は商品開発をするべきであるということ。もちろん商売として利益の確保も大切ですが。

「大使夫人のおもてなし」コーナーは、弊紙創刊70周年を経てますます大使夫人の友人の輪がひろがりつつあります。ここに沢山のヒントが隠れています。注視されることを希望します。


プレバト

司会を務める浜田雅功さんの天才的なイジリ、参加者との掛け合いが絶妙な「プレバト」というTV番組をよく観ます。俳句、活け花、料理の盛り付けなどのお題に対して、著名芸能人が自身のセンスを競い「才能あり」「凡人」「才能無し」の3ランクで格付けする内容に結構楽しませてもらっています。特に俳句のコーナーでは辛口審査で人気の夏井いつき先生が、芸能人による名(迷?)句を批評しつつ添削するのですが、その切れ味がお見事! 歯に衣着せぬ物言いに、今ではすっかり大ファンとなってしまいました。

先週放送回のお題は「節分」。家内と楽しく観ているうちに、突如ひらめいてしまい、思わず口に出してしまった一句です。

 節分や 年に一度の 妻退治

……こりゃマズかったかな? と家内の顔をうかがうと、私の顔を見るでもなくTV画面に見入ったまま「いいんじゃない」と返してくれました。内心“ホッ”としました。「ナニッ!?」っと睨まれた日には、大変な事態を引き起こしてしまったと後悔しても遅いですからね。ともあれ、これが俳句の良いところで、咄嗟に頭で語句を並べ、五七五に詠み上げる作業は面白いものです。松尾芭蕉の境地は程遠いにせよ、たとえ凡人や才能無しでも「頭の体操」には最適です。

第一屋製パンの細貝理栄会長ご夫妻とは年に一度、弊社主催の海外研修旅行でご一緒しますが、細貝会長はご自身が心打たれる場面にふれる折りに、すらすらと一句詠むや「これ、どう?」とメモ用紙にしたためて、披露されるのです。そこで奥様からの「菅田さん、添削していただけますか」と恐れ多いお言葉。いやはや、素晴らしい句をかくも量産できるとは、とても私が添削できるレベルではありません。細貝会長作のいくつかの句は私の仕事机の傍らに、直筆のメモ用紙を額装して飾ってあるほどです。

その中でも一番のお気に入りを細貝会長のご承諾無しにご披露させていただきます。これは南仏プロバンス地方のヒストリックタウン、「アルル」に滞在した時に詠まれたものです。

 ヴァン・ゴッホ
 夢追い求めし プロバンス
 石もて追わるを ひまわりは見ゆ

 ご覧のとおりこちらは短歌ですが、私はゴッホが躍動したアルルでの日々とその晩年を詠まれたこの一首が大好きです。という訳で細貝会長のようにいつまでも若々しく聡明な面立ちを保つ秘訣「想作活脳」する力! これが大切だと思われます。


デイジイのパン、食べた事ありますか?

自宅から距離にして約20km、高速道路で順調に行けば40分ほどで埼玉県川口市のデイジイ本店に到着します。2ヵ月に一度くらいの割合でランチタイムに出かけてイートイン・コーナーでコーヒーとパンをいただいてから、お土産用のパンや洋菓子を買って帰ります。

帰路の車中、「どうしてデイジイのパンはたくさん食べられるのかしら?」と家内。これはまったく同感で、胃を全摘した私もなぜかたらふく平らげてしまいます。決して倉田オーナーシェフと仲良くお付き合いをさせていただいているから「ヨイショ!」している訳ではないのですよ。本当に。

そんな恒例の“デイジイ参り”ですが、つい先日の大雪が降った1月22日の事です。
「13時発・16時帰宅」の予定でしたが、すでに自宅の庭には小雪がチラホラと積もり始めています。という訳で出発を11時に早め、昼過ぎには降りしきる雪の中、再び高速道路に入り帰路につきました。

「ホワイトアウトは、こんな景色から始まるのか…」

車窓から白い靄のかかった街並みを見やりながら首都高4号線の永福町出口へ着くと、出口の下り坂を赤いテールランプが埋め尽くしていました。前の車が少し動けばブレーキを離してわずかに進み、すぐにブレーキを踏む。するとタイヤが横滑りします。ですから車間を十分にとって、ゆっくり、ゆっくりブレーキを踏みつつなんとか坂を降り切って自宅へ辿り着く事ができました。その後、夜半まで雪が降り続いた東京の交通事情はご存知の通りです。もし川口から高速に乗るのが、あと2時間遅れていたらと思うと、恐ろしくなりました。

この日は帰宅したら最後、外出できない事を想定してデイジイでいつにもましてパンを買い求めたのは賢い選択でした。こんもり積もった庭の雪景色を眺めながらワインとともに至福の夕食となったのですが、今回初めて食したパンに私たち夫婦は愕然とさせられました。尻尾までアンコが入った鯛焼きを思わせる、びっしりとルーの詰まったカレーパン! 同じく大粒のダイス状にカットされたプロセスチーズがぎっしり“これでもか!”とばかりに詰まったフランスパン! アンコとクリームが絶妙なバランスの生クリームあんパン! 繁盛店とはこういう事なんですね。できそうでできない、プライスありきの常識では思いつかないプラス思考の賜物です。

他にもベルコラーデのチョコロリポップを見つけ、たくさん買い求めました。孫たちのためではありません。すべて“マイチョコ”です! 

従業員の笑顔や接客サービスが醸し出す店内の雰囲気、もちろんパンも全てが「おいしい」。こんなお店が近々、東京駅構内にジェイアール東日本フードサービスとデイジイの業務提携でオープンします。一体、どれだけの人が驚くでしょうか。

「デイジイのパン、食べた事ありますか?」

口コミやSNSでの話題は、パンのようにふくらむ事でしょう。


弊社社長 菅田耕司のコラム


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