サバイバリティー
日本を訪れる外国人観光客が昨年度は3千万人近くに達しました。
それは2013年に「日本の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録された事が大きな要因かもしれません。世界の料理人が知り得なかった「うま味」は和食の原点ともいえるもので、自然の恵みを積極的に有効活用し、食のひとときを家族や友人たちとともに五感をもって共有する。いわば食文化が人と人、そして“くに”との絆を深めてきた事が評価されたのでしょう。
我が国の食の素晴らしさは和食にとどまりません。「日本のパンは世界一おいしい」と日本人はもちろん、多くの外国人観光客からも高い評価を受けています。日本におけるパン食の歴史は決して長くはありませんが、戦後の復興、経済大国への歩みとともに目覚ましいほどの進化を遂げて現在に至っております。おいしいパンがいつでも味わえる安定した品質と技術革新は、もはや世界で抜きんでるレベルです。もちろん各社が研究・研鑽を重ねてきた企業努力の賜物であり、わずか70年ほどで世界を代表するフランス・米国・ドイツといった、かつて目標としてきた“パン先進国”と肩を並べ、食パンをはじめ調理パンや菓子パンに至る多彩なパンをつくり続けています。
しかしながら、驚異的な発展を遂げてきたパン・菓子業界においても少子化による人口減少や経済の鈍化等の影響は大いなる課題です。
「生産の現場では人材不足に伴う人件費や物流コストの上昇により、収益が圧迫され、
厳しいサバイバリティー(生き残り可能性)が求められている」
先日開催された山崎製パンの株主総会“事業の経過およびその成果”で飯島社長が目下の経営環境についてコメントしました。
大げさに語る訳ではありませんが、今まさに歴史的な転換点を日本だけでなく世界が迎えているのではないでしょうか。今後、企業が生き残るための条件は、環境・食糧・資源そして地球温暖化といった諸問題が山積している中で「食糧」の分野で各社が切磋琢磨し、さらなる企業努力に迫られることでしょう。その生存競争は佳境を迎えていると思われます。資源の乏しい日本は、企業の垣根を超えた“共有や協調”という発想をもって、将来に向けたサバイバリティーを高め合う事を願うものです。
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