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コラム 三寒四温

弊社の週刊紙「速報・製パン情報」から、好評の三寒四温をご紹介。
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再手術

手術を終えて5日目、酸素や点滴、血液検査用のドレインまで全ての管が身体から外れて身軽になった夕方、昨日のこどもの日に見舞いで来院してくれた娘と孫2人が「明日から学校が始まるから、しばらく顔を見られないの。頑張ってね!」と励ましてくれました。「アレッ?」と言って私のベッドテーブルの脇に置かれたロッテの『歯につきにくいガム』を見つけるや、ダンス部に所属する高2の長女が、

「あ、このガム、前にママが“食べなさい”って買ってきてくれたのと同じだ」
「ヘェー、歯につくのイヤなの?」
「違うよー。ママったらね、高校受験で少しでも点数とれるようにって。ほら、ここに“記憶力を維持する”って大きく書いてあるでしょ? ていうか、“中高年向け”ってのを“中高生向け”と読み間違えて、さっそく買って来たみたい」

全員大爆笑です。
「やるねママ」「本当、おっちょこちょいなんだよ」と言われ放題の娘。

「お父さん、恥ずかしいから誰にも言わないでよ本当に! ルナも良く憶えてるわねぇ」
またまた大笑いです。


そんな楽しい事があったGWも今日で終わり。明日からは病院も外来の患者さんで忙しくなるな、僕はあと1週間で退院だ! ……と、トイレに行こうとベッドからゆっくり立ち上がろうとした瞬間、左脚がカクンと“ヒザ折れ”して床に転んでしまいました。

どこに当たったのか、左足の親指の爪先から血がしたたり落ちています。大きな音に気付いて駆け付けたナースさんに「どうしました?」と訊かれ顛末を話すと、すぐに当直の医師も来て咄嗟の判断で「レントゲンを撮りましょう」の一言。人気のない透視室へ車椅子で移動して撮影しました。

GW明けの翌朝、執刀医が病室に来て、「レントゲンで診る分には異常ありませんが、念のためCTも撮りましょう」という事になり、採血を済ませベッドで待機していると、暗い表情を隠すかのように明るくふるまう主治医が結論を切り出します。

「単刀直入に申し上げます。神経を避けて脊椎を固定させた4本のボルトのうち、1本が神経を圧迫しています。大変ですが今夜再手術を行います。よろしいですか?」

寝耳に水、そりゃあ驚き桃の木山椒の木です。山椒といえば下高井戸『宮川』の鰻が食べたいなぁ……いやいや、そんな場合ではありません。

「感染症は大丈夫ですか?」

2年前の胃癌手術で感染症にかかって9日後に再手術、退院が2ヵ月伸びた記憶が頭をよぎります。「万全を期します」と医師。しばし熟考の末、

「それではお願いします!」(アー、なんて事だ)

昨日は家内が独りで日曜礼拝に行き、私の一日も早い回復を祈ってくれたのに。試練はまだまだ続きそうです。

混迷を続ける日本、いや世界経済の中にあって、食に携わる我々が為すべき事は無限にあります。贖いの愛の力が体いっぱいに注がれて「生かされた」事に感謝して、微力ながら与えられた使命を少しでも全うできたらと願いました。



レッドクロス

飛行機がガラス窓の桟をゆっくりとなぞるように走り抜けて行く。そしてかすかなジェット音を残して消えた。

カシャーン、シャー。カシャーン、シャー。

またあの女の子だ。病室のドアを隔てた廊下を、金属製の松葉杖を支えに一歩一歩ゆっくりと歩く。時計を見ると午前11時ちょうど。毎日決まった時間に私の病室の前を通り過ぎて行く。

見舞いに訪れた家内に車椅子を押してもらい、1階のタリーズへ。私はチャイティーのアイス、家内はタピオカ抹茶ティーで共にトールサイズ。店を出て、ふと病院の外観を眺める。群青色に染まった雲ひとつない、抜けるような空の下に大きなレッドクロスのマークが周囲のビル群の中で一際目立つように飾られている。血塗られた紅い十字架。改めて見るに厳かなシンボルだと思う。正面口の脇にはお花畑が続き、所々に平らな木製のベンチが置かれている。そこへ、松葉杖をついた少女が近づいて、腰掛ける姿が見えた。「オヤっ? ママ、あの娘だよ。ほら、“カシャーン・シャー、カシャーン・シャーの」。右脚を投げ出して左手を後ろのベンチにつく。右手にはタリーズのアイスコーヒーかな? いや違う。あのオレンジ色のストローはタピオカ抹茶ティーだ、ママと同じだよ。

抜けるような青空、雲ひとつない5月晴れのレッドクロスガーデン。彼女はじっと青空を見上げている。私はというと、ハワイから帰国して6日後の5月1日に入院、2日に再手術、そして今日は5月4日。明日は日本全国、こどもの日だ。頭上に広がる澄んだ青空を横切り飛び去っていくジャンボジェット。只今午後2時、この時間帯の出発ならヨーロッパかアメリカ東海岸方面かな? ハワイ便はチャーター便を除いて夜6時過ぎから10時までと決まっているから。そんな他愛もない事を考えている。

術後の経過は良好、エコノミー症候群を起こすかもしれないと両足に装着されていたマッサージ機、酸素吸入も点滴も外れた。残すは背中の手術痕から出てくる血を観察する「ドレイン」だけだ。多分、明日の朝にはそれも抜かれ、めでたく生身の身体に復活の予定だ!
 
10階の病室のドアの向こうには、超豪華な広尾ガーデンタワーズのマンション群がどっしりと構えている。それぞれの部屋には、それぞれの家族がそれぞれの生活を営んでいる。それが何かは知る由もない。壁一枚で隔てたそれぞれの日常生活がある。周りのビル群では屋上の赤色灯がテンポを合わせて点滅している。

静かな平和のとばりが今日もやってきた。明日からのリハビリをしっかり行い、予定通り2週間で退院できますように。全ての人々が健康でありますように。月明かりが差し込む病室から祈る。

カシャーン、シャー。カシャーン、シャー。いつも通り、あの娘が通る。自発的なリハビリ。早く良くなるといいね。今日もまた、穏やかな私の日常が始まっている。


100歳世代

今年もマスターズ名勝負を堪能し、プロゴルフのTV観戦が楽しみなシーズン到来となりました。雨風にさらされて育つ芝目を読み、刻々と変化する自然との会話。天国と地獄とばかりにさまざまな顔を見せる、世界中のゴルフコースを舞台に活躍する選手たちの素晴らしい技と精神を、我が身に重ねての観戦はまさに「ワクワク」ものです。そして、あの石川遼さんがジャパンゴルフツアー選手会の選手会長に就任というニュースを見て、時の流れの早さをしみじみと痛感する次第です。

新進気鋭の若き天才・藤井六段棋士や二刀流で活躍するエンゼルスの大谷選手など、各界における若手台頭に日本の良き将来が予見できますね。宇宙飛行士のガガーリンさんが人類で初めて宇宙に出た時、彼はこう言ったそうです。「神はいなかった」と。神様は見えるものでないですよね。彼のジョークは世界を賑わせました。プロゴルファーやプロ棋士、そして赤ちゃんからご老人まですべての人の生き様は、おそらくガガーリンさんが発した“神”のご計画で生かされているのかもしれません。

北海道在住の野中正造さんという112歳の方が、男性では世界最長寿として先日ギネスブックに認定されたことをTVニュースを見て知りました。皆さんは覚えていますか? 泉重千代さんを。彼は120歳(諸説あるそうですが)という人類初の大還暦を迎えました。そして団塊世代である私たちは〝泉レコード〟を更新する「100歳世代」なんて呼び方もあるとか。長寿を後押しする好材料は医療の飛躍的な進歩と食生活の改善だそうですが、元気な頭と身体を維持しての100歳台という人類の願い以前に、神様にとっては予定通りのご計画なのかもしれませんね。

重千代さんの長寿祝いを取材した際、女性レポーターが長生きの秘訣を尋ねると「酒と女かのう、女は年上がいいのう」と黒糖焼酎を呷りながら答えたそうです。気の利いたジョークが飛ばせるくらい冴えた頭で迎える長寿。これが理想ですね!

100歳世代には生きがいとなる「生涯学習」「生涯勤労」などの長期的な目標が欠かせません。そして、おいしい料理をおいしく食べられるよう健康な身体を担う食生活のシーンを期待しています。

iba 2018

「思い起こせば15~6年前、頃は10月、秋の巴里。パン屋巡りを名目に、男2人でパリの町をグルグル回ったなぁ」
「オペラ座の前の有名なカフェで苦ァーいコーヒー、無理して飲んだねー。あれは確かエス…そう、エスプレッソって奴よ。コーラの原液でも飲んだ気分だったねぇ。なァ金ちゃん」
「コーラの原液、飲んだ事あるのかよ! それにしても周りの奴ら、チビチビとあの小さいカップで飲んでやがるもんだから、イライラしたね」
「でも八っつあんもチビチビ飲ってたじゃあネェか」
「アイヤ、すまねえな。なんせ江戸っ子なもんで、コーヒーはアメリカンって決めてんだから」
「なに言ってんだか分からねえよ」
「それにしてもキレイな町だね、パリは。石でこさえた家の上に金色の天使がわんさと」
「八っつあん、パン菓のスーさんが言ってたラ、ラ……ラファ……」
「ラファイエット!」
「舌が回らねえよ。そのラファイエーにある、ドングリしか食わさねえで育てた豚のハム、早く喰いに行こうぜ」
「おう」。

……ってな訳で2人はラファイエットデパート食品館の2F にある生ハムコーナーへ繰り出しました。

「金ちゃん、ずいぶんと高い丸椅子だなー」
「オイラもさっき便所で背伸びしても届きやしねえ。仕方なしに大の便器で用を足したよ」
「これじゃクルクル回っていけねえ、ハムが喰えねえや」
「仕方あるめえ、立って喰うか」

注文したのはイベリコ生ハムのスライスとシャンパン。

「この、いつまでもシュワーシュワーと下から泡が湧いてるのがシャンパンよ」
「シュパーっと一瞬で終わっちゃうラムネとは違うねえ」
「馬鹿言ってねえでドングリの生ハム、喰おうぜ」
「ナ、ナンダこりゃあ!」
「脂が舌の上で溶けるぜ」
「上品な、俺みたいな味だねえ」
「馬鹿か金ちゃん。でもよう、世間様にゃこんな旨ェ食い物があるもんだなぁ」
「スーさんが言ってたよ、この店の裏のコーナーで売ってる鰻一匹まるごとの燻製、こいつも病みつきになるそうだよ」
「よし、一本買ってホテルで日本から持ってきた焼酎のアテにしよう」
「シュワシュワもいいけど、やっぱり焼酎だね」
「パリじゃあそうしょっちゅう飲めねェからな」
「イベリコやウナギよろしく、上手いこと煙にまきやがって」
「燻製だけにね」

 本年9月、ドイツのミュンヘンで開催される「iba 2018研修ツアー」を開催します。南イタリアのマテーラとその近郊を訪問する予定です。

八っつあん金ちゃんに負けない好奇心でヒット商品となる食材を探求しましょう。お楽しみに。


弊社社長 菅田耕司のコラム


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