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コラム 三寒四温

弊社の週刊紙「速報・製パン情報」から、好評の三寒四温をご紹介。
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IBIE2019

米国ラスベガスで9月8日から開催されたIBIE2019(国際ベーキング産業博覧会)。弊社企画による視察研修団一行の22名は、初日から3日間にわたってコンベンションホール内に展示された世界中の最新製菓製パン機器をくまなくチェックしました。各社ともデモンストレーションが秀逸で、特に小麦粉などの原材料や多彩なアイデアあふれるパン等のディスプレイは素晴らしく、いかに “見た目” で引きつけ、おいしく見せるかという演出の数々は、プロの来場者はもとより消費者の目線まで気配りされているようです。

製菓製パンの見本市としては世界ナンバーワンの規模を誇る同展だけあって世界中から大勢の来場客が訪れ、各社ブースの展示機器の前では熱心に質問と商談が交わされています。日本からは世界に販路を持つレオン自動機、オシキリが出展し、欧米や中東のベーカリー関係者が熱い視線を送っていました。

「あっ、ピーターだ!」

弊社創立70周年記念セミナーとして日本パン技術研究所ならびに日清製粉、日本製粉、昭和産業、日東富士製粉の4大製粉メーカーとのコラボという、まさに奇跡のセミナーを2年前に主催しましたが、この一大イベントで講師を務めてくれたピーター・イェン氏と久しぶりの再会です。今や全米、いや世界ナンバーワンの製パン技術を誇り、“クロワッサンの魔術師” の異名は伊達ではありません。年間250日は世界各国でセミナーを請け負うという怪物級のバイタリティを持つ製パン伝道師です。ルサッフル社のブースで実演デモをしている所を発見しました。

実は2年前の弊社セミナーに招聘できたのは、今回の研修ツアーに参加しているデイジイの倉田博和社長がピーターと旧知の仲という縁あってのお陰でもあります。ピーターの凄腕ぶりをあますことなく収録したDVDの在庫が少しだけありますので、ご興味のある方は弊社編集部までお問い合わせください。

有意義なIBIE2019を視察して、次の訪問地ロサンゼルスでは移動日の9月11日にMLB観戦。アナハイムを本拠地とするエンジェルス対インディアンス戦の結果は……

ご存知の通り、大谷翔平選手のホームランが飛び出しました! スタンドは総立ち、大興奮でハイタッチの連続。しかし翌日には「膝の手術で今シーズン残り試合は全て欠場」という発表がありました。至極残念ではありますが今季ラストの試合を生で観戦し、しかも “ビッグ・フライ” を見られるとは……。

各自それぞれの思い出を胸に秘めて、9月16日に無事に羽田へ帰着しました。


栄枯盛衰

高級食パン専門店を看板に、というかそれらしく見せるためなのか大きな暖簾を掲げる店がここ1~2年でずいぶん増えました。私の住む新宿近辺は言うに及ばず、都内のそこかしこに季節外れの雨後の筍のごとく林立しているのを通りすがりの車窓から感じていたのですが、最近、「オヤ?」と首を傾げたくなる景色の “違和感” を覚えつつも、いかんせん注意が手繰り寄せられません。歳のせいでしょうか。

というのも、「ここって確か、食パン専門店だったよな?」と思しき建物のシャッターが降ろされ、テナント募集の貼り紙があります。「あらら、ここもだ!」。かろうじて営業を続けている店も、チラッとのぞく限り客の姿はなく閑散としています。日本橋や銀座の食パン専門店では、店の前に正しく行列させるべく置かれた赤いベルトを張るためのポールが寂しく置かれていますが、店の外にも中にも客はいません。かつての賑わいの名残りのように整理役のガードマンが独り立ち尽くして暇を持て余している姿は悲哀を感じます。歴史を重ね洗練されたブランド品に勝るものなし、ということでしょう。

新大久保界隈ではタピオカドリンクの店が密集してひしめき、JCやJKが中心となってどの店も長蛇の行列が当たり前でしたが、夏休みが明けた最近では、並ぶ店はわずかでほとんどの店は閑古鳥が啼いています。伸びるチーズがインスタ映えするハットグ店や再ブームのソウルフード「タッカルビ」等を提供する韓国料理店にはそれなりの行列も見られますが、以前より人通りが減少しているようで最近仲間入りした “新入り” 地元住民としては少々拍子抜けですが、何事も “適正” がよろしいのでしょう。

次に流行るものは何でしょうか? JCやJKが媒介となって拡散するカワイイ・オモシロイ・インスタ映えするモノと、「並ばないと買えない高級食パン」には何やら共通点を感じます。自分が食べることが最優先という訳ではなく、どう見られるか(SNSの反応あるいは贈答品としてのステイタス)に特化して認知された、脱サラ・開業を熱望する人たちが飛び付きそうな業態に、果たして未来はあるのでしょうか。マトリョーシカ人形のごとく、時には姿を変えて徐々に小さくなり、やがて限界を迎える。真面目に商いをしているお店や企業にとって、避けては通れない人間の心理をついたトレンド、いや “珍商売” も、時には反面教師という名の必要悪か? などと改めて痛感させられる街の移ろい、栄枯盛衰ですね。

儚い話はこの辺で筆を置き、日本をしばし離れます。IBIE2019が開催されるラスベガスへ、弊社企画の研修団一行とともに出発です。次回はきっとGOOD NEWSをお伝えできることでしょう!

お・す・そ・わ・け

家内が好きなTV番組のひとつに「人生の楽園」があります。都会から地方へ、夫婦して移住して第2の人生を送る。時にそこは限界集落だったり、漁師町や美しい里山など舞台はさまざま。30分間の放送から伝わってくる移住者達の充足感はもちろんのこと、移住先の魅力や住民とのあたたかい交流秘話が我々視聴者を和ませてくれます。

そしてナビゲーターを務める西田敏行さんの豪快な笑いと巧みな語り、番組を締める“相方”の菊池桃子さんとの会話のキャッチボールも毎回楽しみのひとつです。ん、やけに詳しいですって? そう、私もつられて毎回観ています。土曜の18時台は外出が多いので、帰宅早々に録画しておいたものを再生して楽しんでいます。どうやら私達夫婦はこのお茶の間でくつろぐTV桟敷のひとときこそが「人生の楽園」のようであります。

番組に登場する移住希望は50~60代の方が多いですね。中には若いカップルもいます。この方達が寒村を活性化させる起爆剤となって新しい息吹をもたらすことで、あたかも理想郷であるかのように見せる番組制作スタッフの映像力には拍手を送りたいですね。この30分間が、とにかく心温まるひとときなのです。

彼らは移住先で何らかの仕事に就かなければ収入が得られません。そこで食堂、民宿、喫茶店、農園や蕎麦屋、そしてパン屋など一度は「やってみたいな」なんて思わせる職種が並びます。中には「週1日、1組」の予約しか受け付けない民宿や週2日だけ営業する蕎麦屋さんなど、「こだわりは目一杯、でも体への負担は最小限」で楽しむ気ままなライフスタイルがSNS拡散などで人気を得て、都会から寒村への観光だけでなくプチ移住・プレ移住の誘致も話題を呼ぶなど、地域活性化に貢献しているようです。

移住先のご近所さん達とすぐに打ち解ける内容に、最初は「ヤラセかな?」なんて疑っていましたが余計な心配のようです。特番放送の回では西田敏行さんが移住者さん達を訪ねて〝その後〟を紹介する企画がありましたが、皆さんすっかり地元になじんで農作物や魚、パンなど日本人らしい「おすそわけ」の精神でシェアしてコミュニケーションする姿を楽しむことができました。

昨今、何かと話題の滝川クリステルさんのスピーチが印象的な「お・も・て・な・し」は素晴らしい日本の文化だと思います。一方、「お・す・そ・わ・け」は? 都会のコンクリートジャングルに佇むマンションでは死語となりつつあるようで寂しい限りですが、私達は「向こう三軒両隣」の交流に活用しています。籠ってみたり無視したりする “他人” はつくりたくないものです。

新世界 <後編>

コ・サムイ(サムイ島)の西側に位置するナトン港の桟橋の先には下船する我々観光客を待つタクシーの列。といっても小さなピックアップトラックの荷台を改造して両側にベンチシートと屋根を付けた、乗り合いトラックならぬタクシーです。ドライバーはサムイ島沿岸に点在するビーチや街など行き先を連呼して客引きし、満員になったら出発という段取り。このバックパッカー相手の呼び込みはフェリーが到着するたびに繰り返される日常茶飯事で、近くにあるオープンレストランも活気があります。

私も乗り合いタクシーに揺られること20分あまり、20バーツ(80年代初頭の金額で約60円)で北側のボープットの船着場へ到着。島から島へ、今度は古びた木造の小さな桟橋から目視できるパンガン島へ、20人乗りの小さなポンポン船で向かいます。

 スラタニ側ではなくタイランド湾を見渡す “裏側” のサンデービーチが見えて来るや、乗客全員が立ち上がって「パラダイス!」と口を揃えて声を上げ、お互い笑顔でハイタッチ。白砂で遠浅のビーチには桟橋がなく、100mほど手前から迎えに来た小さな手漕ぎボートに分乗して、いよいよ “パラダイス” に上陸です!

レオナルド・ディカプリオ主演の「ザ・ビーチ」さながらの絶景はもちろんのこと、当時は電気やガスはおろか水道すらない原始的な状況でした。ヒッピーに憧れるジャンキーな若者が集まる島として有名で、ちょいと危ない「フルムーンパーティー」開催期間は島中のバンガローが満室になるほどです。

私はビーチ北側の小高い岩山に点在するバンガローが常宿でしたね。下のロビー……とは言ってもテーブル一つを覆う茅葺き屋根だけの質素なものですが、私はこういうのが好きなんです! ここでチェックインを済ませ、岩山の中腹にポツンと佇む1ルーム15㎡ほどのバンガローへ。蚊帳を吊ったベッドとベランダにハンモック、トイレは雨水を溜めた桶から柄杓ですくって流すだけ、シャワーも雨水ですがこちらは屋根にタンクが設えてあるので太陽熱のおかげで丁度よい湯加減。

こんな質素な部屋から見渡す、大海原に広がる水平線。明け方にはハンモックに揺られながら、水平線をゆっくりと染め上げるサンライズとご対面です。必需品は当時のヒット商品「ウォークマン」。選曲は……そう、ドヴォルザークの「新世界」。このシチュエーション、泣けますよ!
 
40年ほど経た記憶を鮮やかに呼び覚ましてくれた、サントリーホールのひととき。瞼を閉じても涙が滔々と頬を伝います。クラシックの名曲って、1つの旋律の繰り返しなんですね。同じテーマ(メロディ)をゆったりと、時にはせわしなく。囁くように、時には叫ぶように。多彩なアレンジで重ねられるリフレイン。さあ、私の未だ知らぬ、次に出会う “新世界” は、どんな繰り返しなのでしょうか?

新世界 <前編>

山崎製パン主催の「サマーコンサート2019」が8月23日、赤坂のサントリーホールを貸し切って開催されました。東京交響楽団を指揮するのは銀髪の名コンダクター、秋山和慶さん。前半の演目はドヴォルザークの交響曲第9番「新世界」でした。

「新世界」は私にとって想い出深い特別な曲。
それは、思い起こせば40年近く遡る、遠い昔の話となります。。。

タイ王国の首都バンコクの中心地に「ファランポーン」という、日本の東京駅のような中央駅がありまして、バックパッカーだった私は19時発の夜行寝台列車に乗ってマレーシアとの国境近くの港町「スラタニ」へ12時間かけて向かいます。夕食はキッチンカーからのデリバリー。どれもハイクオリティーなタイ料理をメコンで楽しみました。朝食はトーストとコーヒーのデリバリー、こちらもまあまあ。

到着後は駅前で待機する集合バスに飛び乗ります。2時間ほど舗装がいい加減な道を砂埃を上げながら100キロ近い速度で突っ走るものですから、眠る事もできません。とはいえぼんやりと水田、畑、塩田や放牧された牛の群れ、そして今にも倒壊しそうなドアすら無い藁葺き屋根の屋台が集まったレストランで食事をする人々を眺めているだけでも飽きません。そしてあっという間にフェリー乗り場に到着するのです。

フェリー乗り場には屋根だけの待合室と小さなレストランだけ。弁当などを売る子どもがひしめいていて、リュックを背負った外国人旅行客に声を掛けます。私は10歳くらいの坊やが肩からかけたズタ袋にたっぷり入っている竹筒の弁当らしきものを見つけて1つ買い求めました。坊やは小さなナタでやさしく縦に刃を当ててトントンと割りほぐすと、竹筒には炊かれたココナッツ風味のジャスミンライスがぎっしり入っています。お金を渡すと坊やは両手を合わせて「コップクン・クラップ(ありがとう)」と笑顔で近くの外国人の集団の中に入っていきました。

30分もするとフェリーに案内され乗船。後部デッキにリュックを置いて「竹ご飯」のランチタイムです。船はゆっくりと港を離れて、目指すは「コ・サムイ」。“コ” はタイ語で「島」を意味しますから、行き先はサムイ島ですね。

シャム湾に浮かぶコ・サムイまで4時間の船旅はとても賑やかです。ドイツをはじめヨーロッパ各国やアメリカ、アフリカ等々、世界中から集まったコ・サムイを目指す若者同士で賑やかに語らいます。勿論スマホやネットもない時代でしたから、お互い貴重な情報収集でもあるのです。船の売店で買ったタイの「シンハービール」をラッパ飲みしながら、船は一路コ・サムイに舵を切り、国立公園に指定されている緑いっぱいの島々(ほとんどが無人島)を通過します。

やがてコ・サムイの港町「ナトン」の浅橋が見えてきました。ほとんどのバックパッカーはリュックを背負い直して桟橋を見つめます。

「サワディー・クラップ!」
こんにちは、コ・サムイ。え? ここが新世界!?
いやいや、ここからがスタートです。(続く)


弊社社長 菅田耕司のコラム


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