焼き栗
10月2日、私は成田よりパリを経由してポルトガルのリスボン空港に降り立った。出迎えのガイドに連れられて外に出るとお決まりの強い貿易風が手荒に歓迎してくれた。 今日から3日間滞在する市内のシェラトンホテルに向かう車窓の景色は15年前に来た時と変わらない。いや、何も覚えていないからそう思ったのかもしれない。チェックインを済ませ、フロント脇のピアノバーでバーボンのダブルを引っ掛けて早々にベッドにもぐり込んだ。 翌日の目覚めは爽快だ。時差ボケも一日で正常に戻す特技は、数多くの海外出張をこなす身体が覚えていてくれる。今日の午後は仕事の約束があるので、その前にロカ岬に行って壮大な大西洋を見てこよう。欧州の最西端に位置するロカ岬までは世界遺産「シントラ」を経由して約一時間の道のりだ。シントラは元貴族たちの別荘が緑に覆われた広大な敷地に点在している高級住宅地で、離宮周辺には大理石を砕いて敷き詰めた石畳の細い迷路に小さな土産物屋がひしめいているエキゾチックな街並みだ。そこで屋台の焼き栗を発見。灰まみれになった熱々の割れ栗をむいてほおばる。そんなに甘くないが、なぜか渋皮が秋の味覚を感じさせてくれた。この続きは次号でご報告したい。