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コラム 三寒四温

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元気でね

石巻での支援活動も終了して、もうひとつの目的地である福島県川俣町に向かう前に我々は石巻近郊の被災地帯の視察に出かけた。三陸道から若林ジャンクションを抜けて仙台東部道路を終点の山元まで車を走らせた。山元の先は福島県の相馬で原発も近い。
 仙台東部道路は高架橋で唯一、津波の被害は受けていないが、若林地区から左右に広がるかつての田園地帯は十数キロにわたって津波が運んできた泥に埋もれ無数の車が横転していたり、泥に突き刺さっていたり、その惨状に声も出ない。港から流されてきた大きな漁船がおよそ似つかわしくなく田んぼに佇んでいる、異様な光景だ。
 4月15日、日中の気温は25℃の夏日を記録した。空はどこまでも碧く雲ひとつない、そんな穏やかな空の下の現実はどうしたことか。神は何を言いたいのか。津波の恐ろしさを目の当りにして身震いしながら汗ばんだ手でハンドルを握る。山元から相馬を経て、キャンディーヤパンがある川俣町へ進もうとすると、原発近郊のため交通規制がありこのルートはあきらめ、東北道に戻って福島西インターから川俣町を目指した。川俣、浪江方面へ行く車も、すれ違う車も少ない。時折、自衛隊の緊急車両のステッカーを貼ったカーキ色のハマーとすれ違う。山道をクネクネと曲がるとそこには見事な桜の大木が満開にピンクの花をたなびかせ咲き誇っていた。多分この地で有名な桜の老木なのだろう。でも、花見をしている人は誰一人いない。川俣町に着き、事務所の前に車を止めると齋藤久子専務が満面の笑みで出迎えてくれた。あの、肝っ玉母ちゃんだ。意外と元気そうだが、内心はじくじたるものがあるのだろう。帰り際に、原木しいたけとグリムのかりんとうをいただいた。「これ、大丈夫だから」と、笑って手渡してくれた齋藤さん。 
 心無い一部の国民の風評とも戦わねばならない現実に対するやるせなさを、その笑みに感じた。最新の原子力安全・保安院の発表では、ここ川俣町も退避区域に指定されそうだ。家も店舗も工場もふるさとの景色も全て置いて出て行かねばならない。避難者は地震の被災者よりも多くなるだろう。とにかく「元気でね!」こんなサヨナラしか言えなかった。

弊社社長 菅田耕司のコラム


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