インベーダー
ヤマザキパン・サマーコンサートが今年も赤坂のサントリーホールで開催されました。秋山知慶さん指揮、東京交響楽団の演奏による本日の演目は、堤剛さんとベアンテ・ボーマンさんの協奏にて、ヘンデル作曲の2つのチェロのため交響曲と、スター・ダンサーズ・バレエ団によるチャイコフスキー作曲「眠りの森の美女」ではワルツを、「白鳥の湖」では4羽の白鳥の舞いを、そして「くるみ割り人形」では行進曲と、日ごろ耳にする事の多い、そしてついつい口ずさんでしまう親しみ易い曲が奏でられました。そしてバレエが華麗に曲に乗り、満員のお客様の喝采を受けます。
ところで私は「眠りの森の美女」は以前から「眠れる森の美女」と解釈していたのですが、このような小さな誤解は日頃の会話の中にも多く潜んでいるものですね。例えば一時、社会現象にもなった〝青田狩り〟これは青田買いが正解、〝飛ぶ鳥跡を濁さず〟は〝立つ鳥跡を濁さず〟といった按排です。この〝あんばい〟も、使い方によっては意味が極端に違う事もあります。辞書で調べると、盗人仲間の隠語で逮捕されるとか、人を殺すという意味もあるそうです。そもそも〝塩梅〟なのか〝按排〟なのか迷ってしまいますね。
サマーコンサートの4羽の白鳥でのエピソードがあります。指揮台の前に作られたステージの袖口から、ファゴットの素晴らしい音色につられて4羽の白鳥が両足を〝く〟の字に折りながら並んで現れます。その時の間奏に、多分オーボエなんでしょうか、ブポ・ブポと合いの手が入ります。30年程前、東京都交響楽団の定期演奏会の後に親しい楽団員と酒を飲むのが楽しみでした。ちょうどその頃は、インベーダーゲーム全盛の時で、何を隠そう私もハマったものでした。楽団員が話します。「4羽の白鳥達が出てくるのを見ながら吹くんだけど、なぜか白鳥達がインベーダーに見えて、吹きながら笑って失敗したオケの裏話を聞いたんだけど、本当かな(笑)」「ブポ、ブポじゃなくて、ブボボボーだったらしいよ(爆笑)」「荻窪の音楽ホールで、ファミリーコンサートを開いた時、最前列にいた小さな姉妹が〝あっ、インベーダーだ〟と可愛い声で指差したのはうちのオケだったよね(笑)」。私もその会話を思い出して、思わず笑ってしまいました。心があたたまりますよね。