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コラム 三寒四温

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その先のおいしさ

母が作ってくれたキンピラゴボウは
本物の味だと思います。



なにが本物なの? って聞かれると困りますが、
“旨い”から本物なんです。

キンピラの主役はレンコンの極太切り。6~7㎜ ほどの厚さに立て割りにして、ゴボウと人参も同じ太さで切り分けて炒めます。調理鍋は黒い取っ手でお馴染みの『ニギリ矢』の金色の鍋を使用します。なにしろ軽くて振りやすいんです。年季もので今では多少デコボコして色落ちしていますが、ずっと使い続けている母の形見です。

調味料は醤油と酒。ごま油がひかれた鍋に全部の野菜を入れて振って調理します。味を決めるのはたっぷりの赤唐辛子と昆布。時おり勢い余って人参なんかがガスコンロの横に落ちるのですが、母はそれを拾って生でもポリポリと食べていました。

あれから30年、キッチンでは母直伝の鍋振りを家内が受け継いでいます。

 「ハイ、キンピラ一丁あがり!
  じゃあ、ちょっとリュリュ(愛犬のボーダーコリー・9歳)の散歩に行って
  くるから、たまにお鍋、振っておいてね」

 「ハーイ」

出来上がってから、さらに味をまんべんなくなじませるための裏技? です。慣れない鍋振りでレンコンが1本飛び出しました。指でつまんで前歯でかじり、ゆっくり引っ張ると糸が伸びるんです。それを楽しんだらサクサクサクと一気に食べる。「味の染み込みがまだ足りないかな?」。我が家のキンピラは翌日がおいしい。次の日はさらに旨味が増すのです。

中学生だった頃のある日の夕方、帰宅すると台所のテーブルに裸のアルマイト製の弁当箱が、その上に箸入れを重しに「これ食べてね」と手紙が添えられていました。育ちざかりの私は手洗いももどかしく、蓋を開けて、驚きました。ご飯の上には一面にびっしりとキンピラが敷き詰められていたのです。まずは少しキンピラとご飯を一口。これが旨いのなんの! たまりません。次に半分ほどのキンピラを蓋に取り分けると、キンピラの汁がご飯に染み込んで、いい感じ! これだけでも十分おいしいですよ。今でもキンピラを作った日は、朝から炊きたてのご飯にたっぷりとキンピラを一面に盛って弁当箱に詰め、昼に食べるの見て家内は

「あんたも好きねえ」

と、どこかで聞いたようなセリフを一言。

そこで一句
        朝つめて 昼に食べ頃 母の味

イングリッシュマフィンに、こぼれるほどのキンピラをはさんでかぶりつけば、“ムニュ、サクッ、ポリポリ”と至福の音が聞こえます。この相性が素晴らしい。パンで食せば、ご飯よりも“その先のおいしさ”へ導いてくれる、懐かしい母の味は我が家の一家相伝の味でございます。

弊社社長 菅田耕司のコラム


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