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コラム 三寒四温

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勿怪の幸い

「胃癌ですか―」
「5センチ大の“がん”が胃壁にへばりついていたんだ」
「でも大丈夫だよ。10日ほど入院すれば日常生活が過ごせるよ。胃癌の治癒率は今日では9割を超えているからね」

ほとんどの友人が「胃癌で良かったね」と励まして(?)くれるので、なんとなく安心して入院、諸検査の後、2日後に開腹の手術を執り行いました。

術後6日目の夜の事です。
かかりつけのナースが傷の状態をチェックにやってきて、何やら不安げな表情で医師を呼びました。

「先生、どうですか?」

その後、次々と医師が私の部屋に駆けつけてきます。

(ナ、何なんだ?)

するといきなり主治医が

「菅田さん、奥さんを至急呼び出して下さい」

と意外な一言。

「エッ、どうして?」

手術の際に、腸内に生息している何がしかの菌が増殖して内臓を押し上げているとのこと。

「緊急オペを行います」

という訳で、同意書にサインするために家内が到着するのももどかしく、私はベッドごと移され夜の手術室で独りスポットライトを浴びました。「3・2・1」。……私が目覚めたのはICU(集中治療室)の一室で、傍らでは家内が心配そうに私の手を握っていました。

深夜2時30分の事です。こうして私はICUで10日間ほど過ごした後、いつもの個室へ戻されました。

この日以来、約30日間、飲食禁止です。

ICUでの検査で、小腸に小さな穴が発見されたからです。胃ろうによる食事取り込みで穴をふさぐ処置も始まりました。

そして2月8日の入院以来、実に45日目の3月23日に退院する事ができたのですが、その間に2度にわたる開腹のため、傷んだ肉を切除して新たな肉を盛り上げさせる形成外科の治療も週に3回のペースで自室のベッドで処置を受けるなど、苦しく辛い毎日が続いていたのが遠い出来事だったように思えるのが不思議です。今では週に一度だけ形成外科の処置のために通院しています。

ICU内で担当医に

「もう一度、開腹手術を行うかもしれないですよ」

と言われた時はかなり絶望しましたね。ともあれ「胃癌で良かったね。10日間ほどで日常生活だよ」と仰っていたのは誰でしたかね? まあこんな事もあるでしょう。いくら進歩したとはいえ、医療にパーフェクトは存在しません。医師にしてみればコンマ以下の“想定内”だったのかもしれません。

兎にも角にもあたたかく見守ってくれている家族や社員、そして多くの友人の励ましがあってこそ、今の私が生かされているのですから「勿怪の幸い」ではないでしょうか。


人間、愛されている事が一番だと思います。

弊社社長 菅田耕司のコラム


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