ソウルフル
今では、ほとんど見かけなくなった屋台のおでん屋。
そしてチャルメラの音色を流しながらの屋台のラーメン屋。原型を留めないほどに使い込まれた熱燗用のアルミのカップに注がれた2級酒は麺茹で釜の中でほど良く燗されて、ぶ厚い上げ底のグラスになみなみと注がれて唇を近づけてすすった思い出。ラーメンができるまでの“アテ”は必ずといってよいほどにゆで玉子が定番でした。
この屋台シーン、私は今でも“食文化”に多大な貢献をしていたと確信しています。手軽で安くて、旨い。屋台からは店主の趣味であろうジャズが流れる洒落たおでん屋台もありました。木枯らしが吹きすさぶ風よけのビニールテントがバタバタと音をたてているのも風情がありましたね。これらは今流行のストリートフードの原点でした。
2016年8月、医者から許可を得て久し振りのハワイ旅行へ。
食べたいものがほとんど“ジャンクフード”というのは家内と意見が合います。
まずは「スパムむすび」。レインボードライブ・インのミックスプレートにスクープされたご飯とマカロニには醤油とタバスコをたっぷりかけます。マクドナルドの“ポチギス・プレート”の朝食は、スクランブルエッグにご飯とポチギスソーセージとスパムのスライスでワンプレートです。これもご飯には醤油が欠かせません。タコ・ベルのタコスもハワイで食べると笑顔になります。
なんといってもチリビーンズのホットドックは手と口がベタベタになるもの構わずビーチで食べるのが最高です。
そんなジャンクフード好きの私たちは今年4月にオープンした「ストリートフードスタジアム」の情報を聞きつけさっそく行ってきましたが、試食もほどほどに退散してしまいました。「これは食文化のトレンドでは決してない。屋台の寄り合い所帯だ」との結論に達したからです。日本のストリートフードを建物内に集合させたアラモアナ・ショッピングセンターに新しくオープンした白木屋フードコートは、もっといけません。
いつまでも愛されるジャンクフードには“ソウル”があります。
それらはおのおの独立しているから通いたくなるものではないでしょうか。デパート内の総合食堂には驚くほどのメニューがショーウインドウ越しに並んでいますが、個性が見えません。その点では、タイやベトナム、韓国の屋台にはすべてソウルがあります。食文化は人情と共にソウルフルで引き継いでもらいたいものです。
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