玉将
韓国ドラマの時代劇、特に朝鮮王朝時代を舞台としたドラマはなかなかのものです。家内と焼酎を飲りながらドラマティックなストーリーについつい引きずり込まれ、時が経つのを忘れさせる程の見応えです。
昨夜観た作品では重臣の一人が、目に余る横暴な王命を下す王に向かって
「お考え、お直し下さい、王さまー」
と頭を下げて大声で訴えると、全員が続いて一斉に訴えを繰り返す場面がありました。
この時、ふと横に感じるものがあり、目を向けた先には2年前に購入した将棋駒セットがありました。その駒は山形県天童市が誇る将棋駒造りの名人彫師・国井孝(天龍)氏による作品で、一局分2セットがガラスケースの中に整然と並んでいます。
中でも目を惹かれたのが「王将」の駒です。しかし、2つ並んだ駒をよく見ると……
「王将」と「玉将」
それぞれ彫られた字が漆で盛られていますが、字が違う!
王と玉? ナ、ナンナノダ!
私は将棋を指しません。美術工芸品として買い求め、飾り棚に将棋盤と一緒にディスプレイしています。その隣には平安時代の銘刀、脇差二振りを並べ、天龍作の将棋駒と良く似合っているな……っと自画自賛しているのですが、王と玉には驚きました。
早速ネットで調べてみると“将棋の局面図に両方「王」を使用すると、どちらがどっちを向いているのか分かりにくいため、「王将」の片方は「玉将」で表す”とあり、そして“上位の棋士が「王将」を使い、挑む下位の棋士が「玉将」を使用する”というルールが将棋連盟により定められているのだそうです。
「ヘェー、そうだったのかー、知らなかった」。
もう少し説明を付け加えると、将棋の駒にはもともと「玉将」しかなく、平安将棋からそれは存在していて、「王将」はなかったそうです。そして読み方も「おうしょう」ではなく「ぎょくしょう」なんですって! 飾り棚の刀と平安時代のつながりが、こんなところにあったとは奇遇な話です。
身近にあって違和感なく普通に存在し、その違いに気付かない。そんな事が日常にはいくつもあるのでしょう。
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