アワビの歯
今年もまた、五島列島よりお宝食材が届きました。
五島列島といえば海産物の宝庫。優れた魚介類が豊富に穫れ、中でも天然アワビは極上で黒アワビの産地として有名です。
贈っていただいたものは500グラム超えはもちろん、時には600グラム超えという築地の魚河岸でも滅多にお目にかかれない、というか店頭に並ぶ事はなく、活きアワビとして五島から一流料亭へ直送されてしまう逸品。特に宇久島の巨大アワビは、知る人ぞ知る幻の黒アワビなのです。
これをさばく時は緊張しますよ。
なにせ超デカいものですから、肝もデカい。その肝を傷つけないように大きなスプーンで優しくやさしく殻から外します。まずは殻から身を、そして身から肝を取り分けるのですが、口の部分からハの字に包丁を入れ、一緒にはがしてゆくと、プリップリの肝が身からはがれます。
そしてここからさらに緊張するのが、口から2本の歯を取り除く事。包丁と指先を器用に使って歯を取り出しました。何せ600グラム超えのアワビの歯ですから、ここまで大きく育つには大量の昆布をこの歯で噛み砕いてきた事でしょう。
羅臼や利尻産の干し昆布には時おり穴が空いていますよね? これはアワビが食したしるしで、“この昆布は旨い”という証でもあります。干し昆布を買う時は、ぜひ穴が空いているものを選んで下さいネ。
宇久島には平家伝説があり、五島の古い書物「蔵否輯録(ぞうひしゅうろく)」によると、源平合戦が集結した後、密かに身を潜めていた平清盛の異母兄弟・平家盛が安住の地を求めて漂流中に宇久島の西海岸で魚介漁をしていた漁師に助けられ、文治3年3月26日、宇久島西端の船隠しと言われる宇久島西端の火焚崎に上陸した後、島の領主として7代200年に亘って宇久島を治め五島列島文化の礎を築いたという歴史ある島の由緒あるアワビなのです。
という訳でありまして、アワビの実は当日に肝とすり下ろした生姜に山吹味噌を混ぜ合わせてまな板で叩いて肝ソースをつくり、身をぶ厚く切って氷を入れた桶にキュウリやトマトを放って水貝の一丁上がり。たっぷりの肝ソースをのせていただきました。
歯はそのまま1本ずつ家内と分けあってコリコリと。見つめ合う2人の顔はもうデレデレです。
「あーおいしい!」
本日の酒は「村祐」の黒ラベルと、ハワイ在住の友人におみやげでいただいたハワイ唯一のハレイワ産の芋焼酎「浪花」をクラッシュアイスに注いでいただきました。この2本が「合う!」。残りのアワビは酒蒸しにして肝と共に冷蔵保存です。
ピンポーン。
ん、誰だろう? あらま、5月の初物がもう一品届きました。熊本のスイカです。周さん、ありがとうございまーす。
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