リバーサイドホテル その4
「5つ星ですよ、ヒマワリホテルは」
というわけで修平君がリザーブしてくれたリバーサイドホテルにチェックイン。メコン河を臨むフロント……なんですが、これで5つ星? ちょっと何かが変ですねプノンペン。
そういえばタクシーで来る途中に気付いたのですが、街中を張り巡らせている電線の本数が半端じゃありません。何十本、いや100本以上の束が電柱から電柱へ。ひどいところでは重みで歩道にまで垂れ下がっている風景には驚かされます。昨今の先進諸国では無電柱化が進んでいますが、プノンペンは100年経っても変わらぬ景色が広がっているのではないか?(失礼!)などと想像してしまいます。ちなみに盗電がしょっちゅうあり、修平君のバーは10坪ほどの小さな店ですが、いっとき盗電されたことがあるそうで、1ヵ月の電気代に3万円もの請求が来たこともあるとのこと。平均給与額が2~3万ということからも、想像を超えていますね。
「パスポートとクレジットカードありがとうございます」とフロントレディがにこやかに手渡してくれました。「部屋はアップグレードしてあります。ダブルベッドルームですよ」。
チェックインを済ませエレベーターに乗り3階へ。ヒマワリホテルは4階建てで中庭を囲むように客室が配置されています。あいにく私の部屋はメコン河の反対側、シティービューでありました。部屋に入ると大きなリビングルームで、左右にそれぞれドアがあります。
まず右側のドアを開けると。キングサイズのベッドが1つ、右奥には大きな洗面台とバスタブがありました。「見た目は3つ星の下。ま、いいか」。はて、何がどうアップグレードしているのでしょう。修平君に聞いても「ちょっと分かりませんね」と、彼が今度は左側のドアを開けます。するとツインベッドの部屋とバスルームが。「これか!」2人で大笑いです。泊まるのは私1人なのに、なぜ2部屋に3つのベッドがあるのでしょうか。ま、これがプノンペン流なのでしょう。
部屋の確認も済んだのでホテル1階のメコン河沿いのレストランでランチです。修平君はメニューを見て「ヒェー! ヒェー!」と訳の分からぬ声を出してページをめくっています。「どうしたの?」「久し振りッスよ、こんな豪華な料理」。
聞けばバーの経営はトントン、1本1ドル50セントのビールが1日20~30本出れば良い方で、ラジオのDJやTV出演、ライブ演奏のほとんどがボランティア、しかも従業員2人を大学に行かせて学費も負担しているとか! いやあ驚きました、そして感心。ですから、一日一食。
ご飯に醤油をかけて食べる生活には慣れました、と明るく笑います。「俺がいる間はしっかり食べろよ」なんて偉そうに言っても、たったの3日間ですが。修平君は「フゥ~」と声を出すほどたらふく食べました。食後の散歩でメコン河の側道を歩きます。
「40℃近いかな、今日の気温は。チリチリくるね」。石畳の側道には公衆トイレや資材置場の建物があり、どの建物にも日の丸が描かれているのを尋ねると、「日本の援助でこの石畳の側道が作られたんですよ」と修平君。何やら誇らしげですね。と、その先に見覚えのあるロゴマークが。
「おや? あれは白地に“E”と“K”のマーク……もしかして、メゾンカイザー!?」
プノンペンのメコン河沿いに、エリックの店を発見しました。 (つづく)
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