リバーサイドホテル 5
「間違いない、メゾンカイザーだ!」
思いがけない発見に、声を上げてしまいました。
「それって、有名なパン屋さんなんですか?」
と、醤油かけご飯生活の修平君。
「そうだよ、行ってみよう」
周囲の建物とはそぐわない1枚ガラスの大きなドアを引き開けると、心地よい冷気と同時に
「ああ、この香りだ」
と思わず呟くほどの芳香に迎えられました。修平君も、
「食欲をそそる匂いですね」
と期待を高めている様子。
デニッシュやクロワッサンの甘ぁーく感じるバターの香り。プノンペンでこの香りは、とても信じられない、魔法の香りです。そしてメコン河を臨むガラス張りの店内のなんとまあお洒落な事! 入ってすぐ右側の冷蔵ケースにはバゲット・モンジュにチーズやハム等がトッピングされたサンドイッチが並んでいます。その横のガラス棚にはデニッシュ類が数種類とクロワッサンが。日本やパリの店舗とは違って品揃えが少ないものの、焼き立てのデニッシュもそそられます。私と修平君はカマンベールチーズがたっぷり入ったバゲットサンドをお土産用に、そしてクロワッサンとカフェオレをオーダーして、見晴らしの良い窓際の席に座りました。クロワッサンが1つ1ドル25セント、カフェオレ3ドル50セント。何か変ですね。
と、ここで修平君が、
「最近スタバができて、プノンペン大学の学生や若者達で連日満席なんですよ」
との事。そういえば40年以上前に仕事でたびたび訪れていた台湾の台北市に、日本の上島珈琲店が出店した時にも同じような光景だったなとおぼろげに思い出しました。若者達にとっては“ステータス”なのでしょう。
エリック・カイザー氏の店は以前も偶然発見したことがあります。3年ほど前に友人が出馬した大統領選の応援に訪れたチュニジア共和国でのこと。立地はカルタゴ遺跡そばの観光地で坂の多い街で、可愛い店員さんと一緒にE・Kの看板を背にして撮影しました。
(「日本パン・菓子新聞」2014年2月15日号・76ページ)
他のお客様には申し訳ありませんでしたが、店のほとんどのパンを買い占めて友人の選挙本部に差し入れたところ、大いに喜ばれました。
意外な国の意外な場所で見つけるメゾンカイザー。今後も続々と海外に出店予定があるそうなので、“偶然の遭遇”が楽しみです。
クロワッサンとカフェオレで一服したあと、再びチリチリと照りつけるリバーサイドを歩いてヒマワリホテルに到着、プールでひと泳ぎしてから「平壌レストラン」で“喜び組”のディナーショーを楽しむ事にしましょう。(終)
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