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コラム 三寒四温

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夢の叶う世界

関東を通過した台風の風が未だ吹き荒れる中、久し振りに陽が差し込んできたリビングでTVを観ていると、昨晩の「衆院選、自公大勝」を振り返っています。

時は変わって、2年ほど前の話を――。
NHKテレビから意外な言葉が耳に入ってきました。大写しでアップになったブーランジェが真顔で語るその一言は、聞き流せないものでした。

「料理に合わせるパンは、決して主役になってはいけないんです!」

とっさに私は体を起こして画面の男を注視し、こう思いました。「何を言っているんだ、彼は!?」。そして思わず笑ってしまいました。NHKのインタビュアーは頷きながら「さすが一流のパン職人の言葉には重みがありますね」と返します。

一流のパン職人?  開いた口がふさがらず、そのまま再び笑ってしまいました。ここまで言い切る“パン職人”とは? まぁ人は人、それぞれ持論がありますから好き勝手に言うものですが、奇をてらうような一時しのぎで何の根拠もない、無責任極まりない言葉はTVの世界ではよくあるようです。そして、この次のセリフがまたすごかったんです。

「パンだけは負けたくない!」

彼の店は行列の絶えない繁盛店だそうですが、私は彼のパンを食べたことがないので味を批評できません。しかし、言動は批評できます。マスコミに踊らされる、まるでピエロのようなパン屋さんが昨今のパンブームで持て囃されていますが、私はこの業界に従事する者の一人として声を大にして言いたい。

「パンは主食。パンは料理の主役です。」

彼は最後にこう言い放ちました。「私は材料にこだわるので、原価割れの商品もあります」。実際に周りの人から“儲かりませんね”と言われ、苦笑いを浮かべるシーンもあり、いささか滑稽でした。こんな番組を天下のNHKが放映するとは悲しいですね。NHKよお前もか、そんな気分です。


私の好きなピアニスト、フジコ・ヘミングは彼女の伝記ドラマの中でこう語っています。

「どんなに教養があって立派な人でも、心に傷がない人には魅力がない。他人の痛みというものがわからないからね」

私はいつもこの言葉をいろいろな事柄に重ね合わせて考えることが多いんです。

 教養=パン職人としての精神。
 傷=公正無私。
 他人の痛み=いつでも正義を貫ける人。

最後に、「他人に自分と同じ主観を持て」と強要するのはいかがなものでしょう。一歩譲ってパンと料理、どちらも主役だとしたら、“脇役”って何でしょう? その答えを見つけるのは、あなた自身です。

パンに合う料理、料理に合うパン。いつか夢の叶う世界へ旅立ったとき、果たして私はペンを握って、この答えをまだ探り続けているのでしょうか?

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