三協の精神
平成最後となる
新年のごあいさつをさせていただきます。
紀元前より人類は「農耕」を発見して以降、いつ頃にパンをつくり始めたのだろうか?
自生していた麦を粉砕して水で溶き、焼く。一体どんなタイミングでこの発想が出たのか? この種無しのパンには“塩気”があったのか? 先人達の生きるための手段として膨大な試行錯誤と冒険が積み重ねられて今日の食生活がある事を思うと、SFの如き壮大なストーリーが広がります。
パンの歴史と未来に思いを馳せる度に心に響くのは、フジパンの長谷川さん(故人)の言葉です。「これからの製パン業界はどんな道を進むのですか? どのような方向を目指せば良いのですか?」と尋ねると、
開口一番
「食パンは製パン企業の生命線なんですよ!」
と即答されました。
そして間髪入れず口角泡を飛ばし持論を展開します。長谷川さんは熱い方でした。私が知る製パン業界の中でも尊敬する1人として、業界発展のために“功”を為し続けた方でした。好きな歌は「サライ」。どうして長谷川さんを想い出すのか。それは私の心の片隅にいつも“存在”していてくれる大切な先輩であり、友人だからなのでしょう。
長谷川さんの遺した“生命線”という言葉を借りて申し上げれば、食パンは製パン業界のみならず食品業界全体を活性化する起爆剤だと私は考えます。生食やトースト、オープンサンドイッチやピンチョス。ホットサンドやスナックサンドやランチパック。数え上げれば相性の良い食材は野菜やフルーツも含めて限りなくあります。無限ともいえる可能性の真ん中にパンがあるという発想を大切にしたいものです。
最近、テレビCMが気になります。消費者の健康志向に訴えるフレーズで差別化を図る、という狙いは分かりますが、いたずらに不安を煽る必要はないし、本質から外れた論点で重箱の隅をつつくのも無粋と感じます。宣伝・販売のアプローチは他の方法もあるのではないでしょうか。
21世紀に入り飛躍的に発展を遂げた製パン業界は各社、血の滲むほどの企業努力でブランド力を高める工夫を凝らして売り上げを伸ばしていますが、コマーシャリズムに走るあまり、本質を見失うのではないかと私は懸念しています。
「栄養価が高く、おいしくて体にも優しい」
消費者の期待に合致するバラエティーに富んだ食パンは今も昔もこれからも「当たり前の食環境」を支える、確固たる主役です。“生命線”を預かる立場として、業界一致で「協調・協力・協同」に則ったさらなる切磋琢磨を望んでやみません。それは、まもなく迎える新元号での新しい時代に相応しい原動力となるでしょう。次世代に向けてのメッセージとして、さらなる業界努力にて発展を目指そうではありませんか。
2019年が良い年になることを祈ります。
いや、為すのです。“三協”で。
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