通販の功罪
近頃は自宅療養する日が多くなり、日中からTV桟敷でニュースやワイドショー、映画にドラマ再放送などを鑑賞する事が多くなりました。
そんな中、改めて感じるのが通販番組の多さ! 健康器具やご当地グルメ、サプリメントに家電製品。しかも、
「今から30分以内にお申し込みいただければさらに1万円引き!」
とか、
「どんなに古くても故障品でも結構です。お使いの掃除機を今なら2万円でお引取りします!」
なんて消費者心理を煽るセールストークについつい引き込まれ申し込んでしまう視聴者は相当数いるはずです。実は私もその1人なのです。
昨年から欲しかった「Gゼロクッション」は評判が良いらしく、半年ほど前はネットオークションで定価の2倍以上の値付けでも売れていました。
「まるで宙に浮いているような感覚で、腰痛持ちの私にはピッタリです!」
だの、
「宇宙工学から生まれた新素材を使用しているので、まるで無重力の世界を体験しているみたい!」といった購入者の感想や、街中で通行人を呼び止めてクッションをのせた椅子に座らせる検証ロケ映像などで驚きと喜びの顔や声を大映しで見せつけられては、ますます欲しくなるのが人情というものです。
そして先日、昼のロードショウで“Gゼロ”の通販CMが久し振りに流れていたのを見かけ、ダイヤルするとあっけなく購入できました。
映画が終わると経済ニュースが始まりました。アメリカのとある寂れたショッピングモールの映像が流れます。
「繁栄を続けたアメリカ経済ですが、庶民の娯楽施設も兼ねたショッピングモールの衰退が目立ちます」
とナレーション。
これは他人事ではない、知らぬ間に日本のショッピングスタイルも徐々に「通販」という怪物に席巻されつつある危機感が隠せないな、などと今更ながらにGゼロを通販で買い求めつつも考えされられました。大型ショッピングセンターやモール、そして百貨店の売り上げは減少傾向にある上、無理な薄利競争で経営を逼迫しています。
巨大スーパーマーケットやショッピングモールの隆盛が次々とシャッター商店街を生んで来た時代を経て、今再び個性的な個人商店が見直されています。人情味あふれる商売のスタイルが下町あたりからじわじわ発信されているのも事実です。昔ながらのコミュニケーションによる商売を続ける事は、一億総高齢化が叫ばれる今だからこそ貴重です。買い物で外出したくなるような個性あふれる元気なお店の復活を望んでやみません。“あきない”を活性化させるためにも、降りたままのシャッターを上げていただきましょう。
ちなみにGゼロが我が家に届いて、すぐに使用してみたところ……
残念ながら無重力の“無”すら感じない、ただのクッションとしか思えなかったのは私だけでしょうか。そういえば、この手の通販CMには小さく「お客様の個人の感想です」とテロップが入っているのに、又々してやられました。残念!
■■■■■■■■■■■■■■■■■■