お別れ会
その優しい微笑みが、参列者を迎えてくれました。
1957年、新日本機械工業㈱を設立して頑固なまでに自分らしさを貫き通し、全ては「おいしい笑顔を広げる」というモットーのもとに歩みの歴史を刻み続けてきた人生だったのでしょう。先週、新宿の京王プラザホテルにてマスダック創業者の増田文彦氏(現マスダック名誉会長)のお別れ会が盛大に開催され、600人を超える知人・友人、関係者が故人を偲んでお見送りをしました。
1959年にいち早く自動どら焼機を開発・販売して製菓製パン業界の発展に大きく寄与され、のちに超低圧二次蒸気発生装置付き蒸し器、万能製菓機、遠赤外線ガス式トンネルオーブンなどを次々と開発して世界へと羽ばたく事となりました。また1998年には日本製パン製菓機械工業会会長に就任され、日本の製菓製パン機械メーカーの結束を強固なものとし、関連業界の発展と売上に大きく貢献されました。そして今では全世界的にも有名なお土産菓子『東京ばな奈「見ぃつけたっ」』のOEMを本格開始し、製菓製パン機械メーカーの枠を超えて確固たる超優良企業へと導いたのです。その実績は現社長であるご長男の増田文治氏へと引き継がれました。
経営の第一線を離れた後もシニアの社員と共に新たなる食品機械の改革・発明のため毎日出社し、その余生を費やされていました。以前、お話をお伺いした際に今なお強く印象に残る言葉をいただきました。
個性を磨くんですよ。
そして自分らしくがむしゃらに生きて、
“勇気の証”をつかむのです。
父の意志を受け継いだ文治社長はオランダを拠点に欧州・アフリカを視野に入れた「マスダック・ヨーロッパ」を設立しました。ヨーロッパの製菓製パン機械および関連業者が集結する3年に一度の見本市、ドイツのiba 展や2年に一度のパリで開催されるユーロパン等にも積極的に出展しています。パンケーキラインをはじめニューモデルの展示・実演を行い、ブースには多くのバイヤーが取り囲んでいます。もちろん、いつ通りかかっても商談会場は活気に満ちていました。
お別れ会で献花を終えた参列者1人ひとりに深々とおじぎをして「ありがとうございます」と挨拶を続ける文治氏の声は心なしか震え、眼鏡の奥には光るものが見られました。偉大で尊敬する、大好きな父のお別れ会。悲しみの場ではありますが、多くの人々に愛されていたことを実感し、崇高な意志を受け継ぐ覚悟を改めて固められたことでしょう。
増田文彦さん、天の御国でご友人たちとお達者でお過ごしください。そして私達を見守ってください。私の父も待ってますよ。合掌。
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