fc2ブログ

コラム 三寒四温

弊社の週刊紙「速報・製パン情報」から、好評の三寒四温をご紹介。
速報製パン情報の定期購読お申し込みはこちらからどうぞ。

レジェンド

秋が “ストン” とやって来ました。
先週末に衣替えでクローゼットを整理していると、奥から布に包まれた大きなリトグラフの額を発見。実は2年前に新宿のタワーマンションへ引っ越して以来、コンパクトな間取りゆえピクチャーレールもなく、限られた絵しか架けられないのです。収集してきた絵画のほとんどがクローゼットの肥やしとなっていました。黄色い布にくるまれた額を出してみると、ボストン郊外の冬景色のオフィス街を行き交う人々の息遣いが聞こえてくるようです。

この作品はオリエンタル酵母工業の故・内藤利邦社長から贈られたものです。私が15年程前に大型犬と暮らせる上井草のマンションへ引っ越した際、ワインとこのリトグラフをお祝いにとご持参いただきました。内藤さんはボストンの街並をこよなく愛され、たびたび訪れていました。

「菅田さん、いい絵でしょ? 引越し祝いです」
「ハイ、ありがとうございます」

そして土産の赤ワインをデカンタして、私の手料理を肴にグラスを傾けつつボストンの話題やワインの薀蓄など語り合ったひとときが、ついこの間の事のように思い出されます。あの晩のワインがとびきり美味しく感じられたのは、フランスの芸術文化勲章(シュバリエ)を授章されるほど造詣深い内藤さんと交わした会話が素晴らしかったからでしょう。彼のお人柄は、今でも数多くのご友人達の心に残っているはずです。

秋はどこか寂しげで人を感傷的にしますね。私の好きな紫紺のリンドウが花屋の店先を飾っています。花言葉は “誠実・正義”。 このリトグラフを壁に飾ってしみじみ眺めていると、「パンの窓を通して考える」という、内藤さんが考案した、オリエンタルの基本理念を示す言葉が頭に浮かびました。まさに命を削って製パン業界ファーストを貫いた、レジェンドだったんだなー、と。

そして本コラム校了日に、先達として社長・会長を歴任され内藤さんを育てた、竹澤勝三郎さんの訃報が飛び込んできました。私にとっても竹澤さんは父のような存在であり、まさにお二人ともリンドウのような人生でした。

コロナ禍による新生活様式の中で、自分の心の中に「窓」をつくり、じっくりと見つめて想像すれば良きアイデアが浮かぶやもしれません。「狭き門から入りなさい」というイエス・キリストの教えにも相通ずるフレーズに心打たれます。晩秋の寒さに相反して、心が熱くなる今日この頃です。


弊社社長 菅田耕司のコラム


記事を検索
カレンダー
05 | 2023/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最新記事
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

管理者用