安定・安心・安全
さる9月8日、政府は輸入小麦の2021年度下期(10月~来年3月)の政府売渡価格19%引き上げを発表しました。生産地のアメリカ、カナダ等での作柄悪化による国際価格の高騰、そして昨年来の新型コロナウイルスによる海上輸送費用のコストアップなど悪条件が重なった結果です。
この引き上げ額は、2008年に世界的規模の気候変動が原因の穀物生産不足や中国等の経済発展による需要拡大の影響で記録した、引き上げ率30%に次ぐ2番目の高値となりました。ちなみに農水省が発表した試算によると、加工食品の一例として家庭用薄力1kgが現状268円のところ、14.1円の値上げ、食パンは1斤あたり2.3円としていますが、実際に値上げが実施される10月以降の製パン・製菓の商品価格はどうなるのでしょう?
政府より買い上げた小麦を製粉して販売する製粉会社の営業職の皆様はコロナ禍での大幅な売価改定で相当なご苦労をして胃の痛む非日常での営業活動の日々が続くことと察しますが、何卒健康に留意なさってください。
さて、この「食パン1斤あたり2.3円値上げ」という発表は、数多くの消費者に誤解を与えかねません。現状、食パンの1斤当たりの平均単価は174円ですが、「値上げ後の価格が177円なら騒ぎ立てるほどのことはない」と感じる消費者がいるのも事実です。しかし実際は油脂や生クリーム、マヨネーズ、レーズン、アーモンド等々の原材料費、そしてコロナ感染予防対策や運賃コストに人件費といった上乗せ分もあり、小麦値上げだけの問題ではないのです。
実際のところ、パン・菓子の小売価格は20%上乗せでも追いつかないでしょう。コロナ禍で中食が好調とされていますが、現行価格から一気に20%値上げは消費者の反発を買うので難しいでしょう。ですから、あらゆるコストアップの現実を少しずつ理解してもらいながら徐々に値上げしていく必要があります。ただし店頭POPなど都度の修正作業も増えてしまいますが。
国内需要の9割近くを輸入に頼っている日本の食料自給率は小麦15%、大豆6%、油脂類は13%と低水準です(令和2年度総合食料自給率/カロリー・生産額、品目別)。
自民党総裁選挙と衆院選が近づいています。大国に踊らされない、節度ある資源の確保を担保し、安定・安心・安全な日本国のあり方を考え、実行できる内閣が誕生する事を願うばかりです。
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